転職…クリエイティブの世界に飛び込んだ理由

「人の生活を良くするか、人体を良くするか──自分のキャリアの方向性を考えていた」。金融支援の先で、自分はどこに向かうべきかを考えた上中氏。彼が選んだのは「人の生活を良くする」クリエイティブの領域だった。

 転機は2023年のIVS京都で、現在の勤務先である「The Breakthrough Company GO」のセッションだった。彼が担当していたエリアで最も人が集まり、セッション後の熱気に心を打たれたという。「事業クリエイティブは、これからすごく重要になる。そう確信した」と上中氏は語る。

 彼はその日からGOへの入社を志願し続けた。自費で同社のクリエイター養成講座を受講し、1年かけて想いを伝え続けた結果、ついに内定を勝ち取った。そして、その日のうちにイークラウド退職を決断。「ごめんなさい、辞めます」と即断即決の転職劇であった。

「スタートアップと会えなかった」声から生まれたマーケット

 2024年のIVS後、上中氏の元には「スタートアップと、結局ちゃんと会えなかったんだよね」という来場者の声が多く寄せられた。このフィードバックを受け、彼は「もっと気軽にスタートアップが出展でき、来場者と直接会える場所をつくろう」と発案。スタートアップが安価に出展できる「マーケット」の構想を打ち出し、その企画が実現した。

 チーフディレクターはVC出身の松永和晃氏が務め、上中氏は「現場設計と運営の仕掛け人」として裏側を担っている。「深い知見とイベント設計の役割分担がうまく機能している」と上中氏は話す。

 今回のマーケットでは1日80社超、3日間で計300社が出展予定である。AI、SaaS、ディープテックなど多様なジャンルが集結し、来場者は「自分が会うべき企業」に的を絞って効率的に回ることが可能だ。特に注目すべきは、出展フェーズの構成である。シード〜シリーズAに加え、レイターステージ企業まで多数出展し、資金調達にとどまらず、事業提携や営業先開拓を目指す企業にも価値ある場となっている。

 来場者向けには、すべての出展社をまとめたスプレッドシートを公開している。業種・フェーズなどでフィルターをかけて、効率的な訪問が可能だ。上中氏は「スプレッドシートをダウンロードし、必要に応じてソートをかけて会いに行く企業を絞ってから来場してほしい」とアドバイスする。3日間、出展企業は入れ替わるため、「常に盛り上がる企画になると考えている」と胸を張る。

 出展企業の多くは「VC推薦」「団体推薦」「公募」で選ばれており、VCが案内する“推薦ツアー”もサイドイベントとして用意されている。来場者は「会いたい企業」に投資するVCと一緒に会場を巡ることで、マッチングの効率が飛躍的に上がる仕掛けである。

「VCに案内されながら、狙い撃ちで出会える。これは他にない強みだと思う」と上中氏は語る。