●この記事のポイント ・IVS2025が直前に迫った。2022年の開催では2000人規模だったIVSが、翌年には1万人参加を目標として掲げた。いきなり5倍規模への成長は、どのようにして成し遂げられたのか。長年アドバイザーを務めてきた萩原慶太郎氏は、IVSとの距離感など、どのようにかかわるべきか悩みながら、運営陣にアドバスを送ってきた。 ・まったく共通点のなさそうなラジオとIVSの運営だが、実は大きな共通点があると萩原氏は語る。

 日本最大級のスタートアップイベント「IVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)」が、今年も7月2日から京都で開催される。2007年の初開催以来、日本のスタートアップシーンの成長とともに、その規模を拡大してきた。特に2023年から2年連続で京都で開催され、1万人を動員する巨大イベントへと進化した。

 そのIVSで長年アドバイザーを務めてきた萩原慶太郎氏。2年連続京都で開催された2023年と24年では、イベントオペレーションを企画・統括した。その萩原氏にIVSへの想いとこれまでの関わり方、そして起業家精神や次世代へのメッセージなど幅広く聞いた。

目次

IVSとの出会い

** ――IVSに関わるようになった経緯を教えて下さい。 **

** 萩原氏 **  2016年からです。インフィニティ・ベンチャーズ立ち上げメンバーである小野裕史(現:小野龍光)からイベント運営の相談を受けたことがきっかけでした。そこで大学時代の友人、岡田隆太朗(現日本ディープラーニング協会理事)にも声をかけてIVS事務局を作りました。ただ当時、私はTBSラジオの社員で兼業禁止だったので、ボランティアスタッフという形で参加することにしました。IVS現代表の島川敏明も同じ頃にボランティアスタッフでIVSに関わるようになりました。その他にも現在の中心メンバーがこの頃からIVSに参加しています。

 その後、小野・岡田・私の3名が中心になってIVSを運営していた時期を第2期と呼んでいます。島川がIVS代表になってからの現体制を第3期です。IVSは、ボランティアスタッフの活躍がめざましいのがひとつの特徴で、ボランティアスタッフからIVSの代表になったり、ファンドを立ち上げたり、事業を興したりなどの例が多くあります。

** ――萩原さんはどんな想いでIVSに関わっていましたか。 **

** 萩原氏 **  第2期の3人(小野・岡田・萩原)が意識していたのは、「どのようにスタートアップのエコシステムをアップデートするか」ということでした。IVSが評価された理由のひとつは、ベンチャーキャピタルのHeadline Asiaが運営母体でありながらも単一のベンチャーキャピタルが自分の得になるようなイベント開催をする発想にならなかったことだと思っています。

 エコシステムのアップデートが根底にあるからこそ、海外での開催(台湾)や、百戦錬磨の経験を乗り越えてきた経営者から経験を学ぶ「IVS DOJO」などのコンテンツを作るなどの挑戦をしてきました。

 ただ、当時は招待制だったので、我々3人が運営を続けていたら、いわゆるスタートアップの“同窓会”になるのではという不安がありました。そこで、運営すべてを一度若手に任せ、それを支えようという決断をしました。そこから島川体制の第3期がはじまります。ちょうどそのタイミングで、TBSラジオの編成部長になったのでIVSに携わることが難しくなり、2020年に中心メンバーから退きました。

** ――TBSを退職されたのは昨年ですが、それまでもIVSへのアドバイスを続けてこられたのですか。 **

** 萩原氏 **  神戸(2019年)から那須(2021年)ぐらいまでは全く関わっていません。ちょっとした助言をする程度です。しかしきっかけになったのは那覇です。ちょうど、編成部長の任を終えた時期だったので、夜のネットワーキングパーティーのお手伝いをしたことがきっかけです。

 それから、島川代表らから大規模に成長させたいという相談を受けまして。2000人規模の「IVS2022 NAHA」から5倍規模となる1万人目標の「IVS 2023 KYOTO / IVS Crypto 2023 KYOTO」のタイミングでまた深く関わらせてもらっています。

 私自身はTBSで体験型エンタメ公演や数万人の大規模イベントの実施経験がありました。しかしIVSのスタッフや関係者には1万人規模のイベントの経験のある人がいませんでした。ただ、あくまでも若いスタッフが前面に出るべき組織であり、シニアの自分がどのように参加すべきか悩みました。

 あくまでも若手がやりたい発想を実現するために、私が経験してきたリソースを提供して、制作会社や音響照明の会社までは接続させるのですが、単にプロを接続しただけだと普通のイベントになってしまうし、数倍の成長なんかできない。

 基本的な方向性は彼らが打ち出し、具体的なやり方がわからないときに戦略的に組み立ててプロの施策をもって提案をする。そこの段取りやバランスをするのが私の基本的な役割でした。発想があっても具体策が無い場合などは、このように二人三脚でやりました。

 ある意味、通常のイベントでは「非効率」「不安定」と思われる要素も、敢えて取り入れることで、爆発力に繋がる。それを毎回一定数取り入れることはとても大切です。