CxOのリアル、成長を支える「背中の預け方」

「IVS Growth」は、経営者だけを対象とした場ではない。ナンバーツー、ナンバースリーといったCxO層に向けたセッションも用意されている。常盤氏は「信頼できる経営パートナーとは何か」という問いを立て、CEOとCxOがいかに信頼を築き、共に走るのか──そのリアルに迫る。スタートアップの成長とは、経営者個人の力量ではなく、経営チーム全体のあり方が問われるフェーズだ。「IVS Growth」は、そうした組織的なグロースの観点にも光を当てる貴重な場となるだろう。

“スタートアップ村”を越えて──日本の壁を突き破る仕掛け

「IVSは、これまでの“スタートアップ村”から飛び出すフェーズに入ってきました」。そう語る常盤氏は、PEファンドや戦略コンサル、大企業経営者といった、これまでのIVSにいなかったプレイヤーを巻き込むことに注力した。

 なぜなら、スタートアップのグロースは、もはやスタートアップ“だけ”では成しえない領域に突入しているからだ。異なるプレイヤーが混ざり合うことで、成長に多様な道筋と選択肢が生まれる。常盤氏が言う「視座を上げる」とは、業界の壁を越えて発想することでもある。

「変わったフリは、もうやめませんか?」

 日本のスタートアップが“世界で勝つ”ために必要なのは、単なる模倣や表層的な変化ではない。

「世界のやり方をそのまま真似するのではなく、それを自分たちの文脈に最適化し、自らの行動で変えていく。悪しき慣習や既得権益を乗り越え、新しいルールを作るという意志をIVSの場で持ってほしい」

 常盤氏は、参加者に“聞くだけ”で終わらない「一当事者としての参画」を求める。「IVS Growth」は、受動的な学びの場ではなく、未来への投資の場であり、自らの時間と意志を投じることで意味を持つイベントなのだ。

支援者であり続けることの意味──IVSで得た“財産”

「IVSで出会った人たちの熱量が、自分の支援者としてのあり方を変えてくれた」

 常盤氏にとって、IVSは単なるイベントではなく、価値観や視野を広げてくれた“成長の舞台”でもある。

 今回の「IVS Growth」も、常盤氏自身が足りないと感じたことに対し、自ら手を動かし、仲間を巻き込みながら形にしてきたものだ。「支援する側も常に、成長を止めずに変化し続ける必要がある」──この姿勢こそが、スタートアップ支援者としての彼の哲学である。

誰のためのIVSか──未来を作る“一当事者”として

「IVSは、スタートアップだけでなく、事業会社や地域企業、金融機関、そしてまだ挑戦を決めきれていない人たちにとっても価値がある場です」

 時には刺激が強く、チャレンジングすぎると感じることもあるだろう。しかし、それはいつも、常に課題への鋭い洞察と、明確な意思を持った人々から始まり、“次の一歩”のヒントは確かにある。

「IVS Growth」が目指すのは、過去の成功体験をなぞることではなく、未来への意思と行動を持つ人々が出会い、挑戦の火を分け合う場だ。

 常盤氏の語る「変わったフリはもうやめよう」という言葉は、日本のスタートアップエコシステム全体への静かな警鐘であり、未来を変える実践の呼びかけでもある。

 あなたが今、どんな立場にあろうとも──次の成長を目指す一当事者であるならば、このIVS Growthという場は、確実に何かをもたらすだろう。

(構成=UNICORN JOURNAL編集部)