この結果は、「皮膚に住む微生物が脳や心の状態にまで影響を及ぼしている可能性」を初めて科学的に示した重要なものです。

この結果は、腸内細菌が「腸‐脳軸」を通じて人間のメンタルに影響するのと同様に、皮膚の微生物も「皮膚‐脳軸」を介して精神的な幸福に寄与しうることを示唆しています。

もっとも、皮膚の微生物叢と感情との因果関係はまだ初期的な知見で、今後の研究に委ねられています。

しかし美容業界では早くもこの発見に注目が集まっています。

最近の動向を見る限り、消費者は美容とメンタルヘルスを分けて考えるのではなく、外見と精神の両方をサポートする製品を求めている傾向にあります。

現在ではこうした研究を踏まえて、「肌の善玉菌」を増やすプロバイオティクスや、それらが作り出すポストバイオティクスを配合したスキンケア製品が開発されています。

これにより、肌の微生物バランスを整え、ストレスによる炎症を防ぎ、肌だけでなく心の状態まで安定させるホリスティック(包括的)な美容ケアが期待されています。

実際、ある研究では乳酸菌が産生するポストバイオティクスを塗布することで肌の敏感さが軽減し、ストレスによる炎症反応が抑えられる可能性が示されています。

今後「皮膚‐脳‐マイクロバイオーム‐AI」を組み合わせた新たな美容アプローチが進展しそうです。

もしかしたら未来の人は今のスキンケアを見たら「神経化粧品もAIアシストも皮膚細菌の管理もなしに中世と同じ、塗るだけだった」と感じるかもしれません。

スキンケアが心のケアになる日——神経化粧品の可能性と課題

スキンケアが心のケアになる日——神経化粧品の可能性と課題
スキンケアが心のケアになる日——神経化粧品の可能性と課題 / Credit:Canva

「美しさは肌の表面だけで決まるわけではない」──この言葉が示す通り、現代の美容は今や肌の奥深くを超え、「心」までを含む広い領域に広がり始めています。

神経化粧品や神経美容がこれほど注目されるようになった背景には、外見と内面が密接につながっていることを多くの人が直感的に感じているからでしょう。