②の自動車産業の声ですが、強烈な不満を呈することになるでしょう。一方、赤沢氏の持つ交渉カードが弱いカードを数多く持っていたような気がしてなりません。絵札とかエース級のカードはなかったのでしょう。持たせなかったのは誰でしょうか?石破氏の責任は重いと思います。

③財務省は負けを認めるか、の意味です。日本メーカーは値上げに対して極めて慎重です。例えば税金やコストなど外部環境で30%のコスト増が生じた場合、欧米メーカーは30%ないしそれ以上を当たり前に価格引き上げをします。私もカナダでは全く同様で何の遠慮もありません。「おまえ、値上げしたか?」と言われれば「〇〇が上がったのだからやむを得ない。俺のせいではない」でそれ以上の議論にもなりません。ところが日本メーカーは頑張っちゃうわけです。外部環境で30%上がりましたが、企業努力で10%値上げに留めさせていただきます、と。

これが日本国内で完結するなら良いのです。ところが外国が絡んでくると移転価格税制の問題が生じます。移転価格の説明はここですると長くなるのでしませんが、20年ぐらい前に大きな話題になった国際間の関連会社間取引における取引価格の妥当性です。仮に日本車を売るアメリカの会社が「そんなに値上げできないから一部は自社で吸収する」とした場合、その値引き分を誰が吸収するかなのです。アメリカの関連会社がそれで赤字になっても移転価格制度上、それは受け入れられません。日本車販売のための本国の指示だろう、ということになり、その値引き分は日本本社が負担すべきものになるのです。するとどうなるかといえばアメリカの自動車販売会社は実質赤字でもアメリカで税金を払い、親会社の日本企業の決算は悪化し、黒字幅減少となり、税収が減るというシナリオです。

専門家である財務省は当然のことながらわかっていたはずです。よって関税25%交渉に固執したのは実は財務省ではないかとすら勘繰っているわけです。