かつて1メートルを超え、40キロもの巨体で海を泳いでいたバルト海の「タイセイヨウダラ」。

現地の漁業を支えてきたこの魚が、いまやお皿に収まるほどのサイズにまで小型化しているというのです。

しかもこの変化は、単なる栄養不足や環境の悪化ではなく、人間による乱獲がタラの「遺伝子」を書き換えてしまった結果であることが、独GEOMARヘルムホルツ海洋研究センターの最新研究で明らかになりました。

いま、タラたちに何が起こっているのか?

研究の詳細は2025年6月25日付で科学雑誌『Science』に掲載されています。

目次

  • 最盛期の半分ほどにまで縮小
  • DNAにも刻まれていた「乱獲の爪あと」

最盛期の半分ほどにまで縮小

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かつてのタラ/ Credit: GEOMAR – “Shrinking” Cod: How Humans have altered the Genetic Make-Up of Fish(2025)

バルト海に生息する「タイセイヨウダラ(学名:Gadus morhua)」は、かつてこの地域最大の魚として、ニシンと並び漁業の主役を担ってきました。

そのサイズは大の男性でも両手で抱えきれないほど大きなものでした。

ところが1990年代以降、その数が激減し、体のサイズも年々小さくなっていったのです。

最も大きなタラはかつて体長115センチにもなりましたが、2019年には最大サイズでも約54センチにまで縮小していることが確認されました。

小さいものだと女性の小さな両手にも乗っかるほどでした。

つまり、体の長さがほぼ半分、体積で見れば激減している計算になります。

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現在のタラ/ Credit: GEOMAR – “Shrinking” Cod: How Humans have altered the Genetic Make-Up of Fish(2025)

この異常事態に疑問を抱いた研究者たちは、1996年から2019年までにバルト海で捕獲されたタラの「耳石(じせき)」と呼ばれる小さな骨を調査。