性的興奮が高まったり、愛情や信頼感が強まったりすると、このエリアが激しく反応します。
そのため、性的共感覚を持つ人々では、この感情を処理する脳の働きが人一倍強力で、感情と視覚などの別々の感覚が混ざり合い、カラフルな光やイメージが現れてしまうのかもしれません。
この説は、「強い愛情やリラックスした状況でないと性的共感覚は起きない」といった参加者の声とも一致しています。
この2つの仮説は互いに対立するものではなく、むしろ両方が同時に起きている可能性も十分に考えられます。
つまり、脳内の化学物質に敏感であることと、感情を司る領域が活発に反応すること、この二つが組み合わさって、初めて「性的共感覚」という不思議な現象が生み出されるのかもしれません。
もちろん、この研究はまだ最初の一歩に過ぎません。
実際に参加してくれたのは16人と人数も限られていて、その体験も本人の主観に基づいているため、結果を誰にでも当てはめられるかどうかは、今後の研究が必要です。
ですが、参加者たちが語った驚くべき体験は非常に共通しており、この現象が決して偶然ではなく、人間の脳が持つ未知の可能性の一端を示しているのは確かです。
性的共感覚の謎がさらに解明されれば、私たちが「快感」や「意識」を感じる仕組みについても新たなヒントが得られるでしょう。
人間の脳にはまだまだ私たちが想像もできないような、不思議な世界が隠されているのかもしれません。
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元論文
Altered Consciousness in Sexual Synesthesia
https://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4887264
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。