実際、こうした先天的な共感覚は、人口の約4%もの人が持っていると推定されています。

しかし、すべての共感覚がずっと持続的に起こり続けるわけではありません。

中には、特定の状況や精神状態に応じて一時的に起こる『状態依存型の共感覚』という現象も知られています。

例えば深い瞑想状態に入ったとき、音楽に没頭しているとき、または薬物を使用したときにのみ共感覚が引き起こされるケースがあり、普段は共感覚を持たない人でも体験することがあります。

さらに、ごく一部の人たちは、性的な興奮が高まった瞬間やオーガズムの最中に限って、鮮やかな色や光が視界いっぱいに広がるという特別な共感覚を体験していると言われています。

この現象は『性的共感覚』と呼ばれ、古くからごく一部の体験談として語られてきました。

例えば「絶頂を迎えると万華鏡のような映像が広がった」「まぶしい光や虹色の波が見えた」という証言が、わずかながら残されています。

とはいえ、こうした性的共感覚は、これまで本格的な科学研究の対象とはされず、医学文献においてもごく少数の個別例やエピソードが語られる程度で、謎に包まれた現象でした。

そこで最近になって、ある研究チームが初めて、この性的共感覚について本格的な科学的調査を行いました。

この研究の目的は、「オーガズムの瞬間に色や映像が見える」という体験が本当に存在するのかどうかを確認し、それが起こる状況や条件を探ることです。

また、一般的な共感覚とはどのような違いがあり、人の感情や意識状態とどのように関わっているかについても調べました。

果たして、性的共感覚は単なる脳内の神経配線が偶然絡み合っただけの現象なのでしょうか、それとももっと深い心や感情の働きが関わっているのでしょうか?

オーガズムで色を見るための「条件」とは?

オーガズムで色を見るための「条件」とは?
オーガズムで色を見るための「条件」とは? / Credit:clip studio . 川勝康弘