「生成AI時代の差別化」は“リアルな出会い”にある

 生成AIによって、あらゆる情報がオンラインで即座に取得可能になった時代。──いや、だからこそ、リアルな場での出会いや会話には、計り知れない価値があると國本氏は言う。

「生成AIで得られるのは“公開情報”ばかり。でも起業やスタートアップのリアルな失敗談、M&Aの裏話なんて、ネットには出てこない。つまり、AIの目が届かない情報です。IVSにはそれがあるんです。目の前の人から生で聞ける情報こそ、生成AI時代の差別化になると思っています」

 IVSには、普段は登壇しないような専門家や、企業に所属しない個人のキープレイヤーが数多く集まっているという。しかも彼らの多くが「話しかければ話してくれる」フラットな空気が流れている。

 金子氏がIVSに期待するのは、“次の世代を担う人材”がロールモデルを見つける場となることだ。

「スタートアップの成功者たちも、かつては誰かを真似るところから始まっています。IVSで、本気で起業を考えている人が“あの人のようになりたい”という出会いを得られたら、それがエコシステムとして最高の成果です」

 その背景には、金子氏自身が学生時代に運営に参加していたビジコンで出会った仲間たちが、今や日本を代表する起業家になっているという実体験がある。「その場にいれば、それが起こることを知っている。でも、いなければ想像すらできない」と彼は語る。

AIスタートアップのM&A戦略も明らかに

 今年のIVS AIでは、成長と出口戦略のリアルにもフォーカスする。金子氏は、AIスタートアップのバイアウトやグロース支援をテーマにしたM&Aセッションにも力を入れている。

「DeNAやみずほ、KDDIなど大企業が“グループインしてほしいAIスタートアップ”を語るセッションもあります。また、グロース投資を受けたAIスタートアップの当事者が語るセッションもあります。IPOだけでなくM&Aも積極的な選択肢に入っている時代であり、多くの起業家に様々な可能性を知ってほしい。こうした情報はなかなか表に出ないけれど、まさに今、動きが加速している領域なんです」

 1〜2年で急成長し、次のステージへ進むAIスタートアップが次々に現れている今、日本発のAIプロダクトがグローバルで勝つための“座組み”や“仕掛け”を、IVSで先取りすることができる。

「IVSは“お祭り”です。立場関係なくフラットになれる場。だからこそ、会いたかった人と出会えるし、新しい挑戦が生まれる。そういう“嗅覚の良い人”たちに集まってほしい」(金子氏)

 國本氏も続ける。

「地方にある大手製造業と、東京のAIスタートアップがここで出会って、現実的なコラボが生まれることも多い。スタートアップだけのイベントではない、企業の人たちにとっても“偶然の出会い”が価値を生むんです。AIに少しでも関心があるなら、IVSに来ないのは本当にもったいない。東京のイベントにはない“偶発性”や“濃度”がここにはある。しかも、それは今年しか体験できないかもしれない。ぜひ自分なりの目的を持って参加してほしい」(國本氏)

 リアルで人と会い、語り合い、未来のヒントを持ち帰る──。生成AI全盛時代において、それこそが最大の差別化となる。2025年の夏、京都IVSは“未来を加速させる出会い”を待っている。

(構成=UNICORN JOURNAL編集部)