日本人起業家はグローバルを見ていない!?

** ——日本では企業数に対してユニコーン企業が登場しづらいといわれていますが、海外のスタートアップ事情などを知るおふたりから見ると、その原因はどこにあると感じますか? **
大塚:「ユニコーン企業」という言葉の定義に当てはまる企業が少ない、ということが原因のひとつにあると考えています。
ユニコーン企業とは、企業評価額が10億ドル以上、さらに未上場の企業を指します。日本は創業数年で上場してしまうケースが多いため、ユニコーン企業の定義に当てはまらない場合が多いのです。
小田嶋:経済規模がほとんど同じドイツでは、現在ユニコーン企業が30社以上あります。日本とは違い、上場が容易ではないからです。
また、海外の企業はアメリカでの資金調達を行い、企業の時価総額を上げているケースが多いですね。ドイツやフランスなどで時価総額が数十億ドル規模の企業は、大体そのパターンに当てはまるのではと考えています。
** ——日本の特殊な事情も原因にあるのですね。それでは、スタートアップにおける日本独自の課題などはありますか? **
小田嶋:コロナ禍終了の前後からやや風向きは変化したものの、日本のスタートアップはあまりグローバルに出たがらない、という傾向があると感じています。日本の起業家の多くが、グローバルで事業を広げることを当たり前の動きとしていないのです。
これは、日本の市場が大きく、よくも悪くもここで完結してしまうことが起因しています。もちろん、市場が大きいということは、日本市場での起業自体も非常にチャレンジングなことではあるのですが。
大塚:ほかの国は、国内の市場だけでは完結できないため、ビジネスをスタートする時点からグローバルを見据えて計画しているケースも多いですね。そうしないと、スケールするビジネスにならないのです。
日本の企業は「まず日本で成功してからグローバルへ」という考え方なので、そもそものマインドセットに違いがあります。
小田嶋:日本のスタートアップ支援やVCも、基本は国内用にできあがっているので、「まず日本で成功してから」の方式でグローバルを見据えると、ゼロベースでグローバル仕様の事業展開をつくり上げなければなりません。
こういった事情もあり、日本において最初からグローバルを見据えてビジネスをスタートする方は、やや考え方などが特殊な方が多いですね。
** ——エンデバーが支援する起業家には、そういった最初からグローバルを見据えている方が多いと思うのですが、その動き方や人物像にはどのような特徴があるのでしょうか? **
大塚:エンデバーはグロース(成長)ステージにある企業のスケールアップを中心に支援しているのですが、その段階だと、創業者は日本人でありつつも本社をアメリカやシンガポールなどの海外に置いているケースは多いですね。最初からグローバル展開を見据えている場合、日本に本社を置いているとスケールアップが難しいと考えているためでしょう。
あとは、グローバルでの資金調達を受けられる状況を最初から設計していて、日本のVCだけで株式構成がされていないというケースも多いです。
小田嶋:人物の特徴でいうと、出自も関係しているかもしれません。子どもの頃に海外に住んでいた、なんらかのタイミングで海外で生活していたという方は多いです。
日本の外に世界があるという感覚にリアリティがある上に、言葉の壁がないのでグローバル展開をある程度「当たり前のこと」と捉えやすく、ハードルが低いのでしょう。
大塚:先日、ある日本人のファウンダーの方が、「アメリカで創業する起業家と戦おうとしたら、日本人は日本からインドあたりまでの規模感でビジネスを考えていないといけない」とおっしゃっていました。
というのも、アメリカは国内だけでも、東海岸から西海岸まで飛行機で5〜6時間かかります。そもそも「国内」というものの規模感が違うのですよね。