●この記事のポイント ・7月2日に始まるスタートアップカンファレンス「IVS2025」。「出会い」をコンセプトに掲げる同イベントで、社会課題の解決とビジネスの融合をテーマとするステージが繰り広げられる。 ・IVSソーシャルを牽引する中村多伽氏は、IVSが単なるスタートアップイベントではなく“社会変革の装置”であると強調する。
スタートアップカンファレンス「IVS」は、テクノロジーやエンタメ、フィンテックなど多彩な分野が交錯する、日本最大級の起業家イベントだ。その中で特に注目すべきといえるのは「IVSソーシャル」だろう。社会課題とビジネスの融合をテーマに掲げ、誰もが当事者として社会と向き合うステージだ。
このIVSソーシャルを牽引するのが、中村多伽氏。京都を拠点に、社会課題解決型スタートアップを支援する株式会社talikiを率い、自らも投資家として第一線に立ち続けている。2017年、創業直後にIVSにボランティア参加した一人の若き起業家は、なぜいまIVSのディレクターとして多様なプレイヤーを束ね、社会課題に向き合い続けているのか。
「社会課題解決は、儲からない」という思い込みにどう挑み、いかにしてコミュニティを築いてきたのか。彼女の歩みをたどることで、IVSが単なるスタートアップイベントではない“社会変革の装置”であることが見えてくる。
目次
- 「儲からない」を覆す、社会課題とビジネスの“あいだ”
- 「重度障害児」ではなく「生成AI」なら投資されるという現実
- 京都発・社会課題解決コミュニティのハブへ
- 変化するテーマ、重なる課題、そして「レジスタンス」
- コミュニティが生む“でっかい変化”
- 社会課題を“文化祭”のように語れる場
- 「人生が変わる」3日間に…『何でも行きます』のマインドセット
「儲からない」を覆す、社会課題とビジネスの“あいだ”

「社会課題は儲からない——。よく言われることですが、私はそうは思いません」
そう語る中村氏の声には、確固たる実感と熱が宿る。京都大学在学中にカンボジアで学校を建設し、国際協力の現場を経験した彼女は、社会課題の大きさと、そこに関わる人材の少なさに限界を感じた。そこで起業家として選んだ道が、「社会課題を解決するプレイヤーを支援する仕組み」をつくることだった。
「社会課題が解決されない最大の理由は、そこにプレイヤーにリソースが流れる仕組みがないから。だからこそ、そのプレイヤーが挑戦し続けられる環境を作らなければならないんです」
彼女が率いる株式会社talikiは、起業家支援、投資、事業拡大、オープンイノベーション、シンクタンク、コミュニティ支援といった6つの機能を持つ。社会課題解決型スタートアップの伴走者として、300以上のプロジェクトを支援してきた。
「収益性と社会性の両立は、簡単ではありません。でも、たとえば“新規事業”と言えば企業も乗ってくれる。“投資回収できる”と言えば資金も集まる。言葉の選び方や伝え方で、流れを変えられるんです」