では円の国際化はもはや無理なのか、といえば非常に困難と言わざるを得ないです。テクニック論としてある程度の金利水準を提示する必要があります。高金利には2つの意味があり、1つは高度成長期などに経済が沸騰し続けるために金利を高めに誘導し冷やし玉を入れること、もう1つは国家が衰退期で高金利にしないと通貨の魅力を維持できないケースです。80年代前半の日本はもちろん前者でした。ではこれから日本が4-5%の金利水準を提示できるほどの経済成長ができるかといえば想像力をどれだけ掻き立てても無理ですが、金利が2%程度までなら必死の努力で達成しうるし、アジアの基軸通貨としての最低条件は満たすとみています。
ドル基軸絶対主義が壊れつつあるとみる理由はアメリカ国内の分断、世界の警官から降りていること、国際貢献や国際社会での存在感の希薄化、アメリカへの信認の低下などいろいろあります。パウエル氏の高金利政策は上述の景気が良すぎるというよりドル防衛の意義が強くなっているとみています。よってFRBハト派の声が大きくなればドルの価値は遺棄されやすいと考えています。
欧州が突如、国際通貨ユーロを唱えたわけではなく、それなりの理由、背景、歴史が存在すると考えるとこの「通貨国際化物語」はとてつもなく面白い経済小説になると思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年6月30日の記事より転載させていただきました。