日本の場合、対GDP5%にしてみたところで、中国の国防費にはまだ及ばない。中国の2025年の国防費は1.78兆人民元(約 2460億米ドル)で、これは中国のGDPの1.3%程度だ。実際の中国の国防費はこれより多いという見方もあるようだが、それにしてもGDPの2%もいかない。現在の中国の円換算で約34兆円の国防費と、日本の9.9兆円の国防費の差は、経済規模の差の反映である。中国のGDPは、日本のGDPの4.65倍だ。しかも中国の経済成長率は5%なので、格差は広がり続けている。日本が軍拡競争を仕掛けても、まったく歯が立たない。
欧州諸国は「GDP5%でロシアに勝つ」と鼻息が荒い。その考えが正しいかどうかは別にして、その同じ考え方はアジアでは通用しない。
北東アジアの安定には、安全保障政策の努力も必要だろうが、外交の役割が不可欠だ。果たしてそのときに必要となる外交措置が、本当にNATOの加盟国でもないのに加盟国であるかのように振る舞うことであるのかについては、冷静な議論が必要と思われる。
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