今回の首脳会議に関して言えば、日本はのみならず、NATOがアジア太平洋地域のパートナーとみなす「IP4」を構成する日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国のうち、首脳級を派遣したのは、ニュージーランドだけだった。つまり、韓国とオーストラリアも、日本と同様に、首脳級を送らなかった。

欧州地域を専門とする国際政治学者の方々や朝日新聞等のメディアの意見では、外務大臣の派遣だけでは全く不足なので、その意味では、韓国もオーストラリアも同じように責められなければならない、ということになる。

私個人は、韓国などと足並みをそろえた判断は、妥当であった、という気がしている。だが国際政治学者の方々は、それではダメで、他国はともかく、日本だけは率先してNATO加盟国であるかのように振る舞うべきなのだという。

なぜ、NATOが、日本にとってそこまで重要なのか。

NATOは、北米・欧州の安全保障を維持するための地域組織である。冷戦中の西側陣営の諸国が作った組織であるという点で、特に普遍的だとも言えない軍事同盟機構である。

オランダ・ハーグで開かれたNATO首脳会議 Wikipediaより

日本にとって、良好な関係を維持することに損失があるとは思わないが、NATOの政治的立ち位置の過度な美化や、その能力の過剰な評価をするのであれば、別次元の話になる。アジアでただ一国で突出して、NATOの加盟国でもないのに、あたかも加盟国であるかのように振る舞うことに、どれほどの日本の国益に合致する意味があるのか。いずれにせよNATOが、日本にどれほどの貢献をする組織なのか。冷静な議論が必要だろう。

EUのフォンデアライエン委員長やカラス上級代表は、「ロシアは負けなければならない、そうでなければ中国が台湾に侵攻する」といったレトリックを好んで多用しているが、これはEUやNATOが東アジア情勢の安定のために何かをしようとする話ではない。むしろ、アジア諸国に、欧州の安全保障に貢献させたい、という場面で言っているだけのことだ。