また、慢性腎不全の患者でも高頻度にこのたんぱく質の蓄積が見つかったのです。

そこで、マウスを使った実験を行ったところ、腎機能が正常な場合は血液中のα-シヌクレインが腎臓で処理されるのに対し、腎機能が低下していると血液中に残ったままになり、それが腎臓を通じる神経経路(腎神経)を介して、脊髄や延髄などの中枢神経にまで到達する可能性があることがわかりました。

さらに研究チームは、腎臓の神経(腎神経)を切断すると、脳へのα-シヌクレインの拡散が防げることも確認したのです。

腎臓から始まる!?パーキンソン病の意外な発症ルート

この結果から、腎臓が単なる「老廃物をろ過する器官」ではなく、パーキンソン病において重要な役割を果たしている可能性が浮かび上がってきました。

つまり、腎臓が正常に働かないと、血液中に異常なたんぱく質がたまり、それが神経を通じて脳にたどり着いてしまう。その過程で、脳内に神経細胞を破壊する原因物質が蓄積され、病気が進行するというシナリオです。

実際に、マウス実験では腎機能の低下が、ドーパミンを作る神経細胞の減少と運動機能の障害につながることも示されました。

また、骨髄移植によって血液中のα-シヌクレインの量を減らすと、パーキンソン病のような症状が和らぐことも確認されています。

Credit:ナゾロジー編集部,OpenAI

これらの結果は、「パーキンソン病はどうして起きるのか?」という根本的な問いに、新しい道しるべを与えてくれます。

腎機能を維持することで、脳の病気の発症リスクを下げられる可能性も示唆されています。

このことは、脳の健康を守るカギが、実はもっと身近な臓器にあるかもしれない、という新しい視点を示しています。

なぜなら、腎臓は高血圧や糖尿病など、身近な生活習慣病と深く関わっており、その管理は日常的にできるからです。

今回の研究は、パーキンソン病が脳だけでなく全身の健康状態、特に腎臓の健康と密接に関係している可能性を示した点で、非常に画期的です。

脳と体はつながっている