手が震える、動きが鈍くなる、転びやすくなる。そんな症状があらわれる病気として知られるのがパーキンソン病です。
多くの人がこの病気を「脳の病気」として理解してきました。実際、これまでは脳の中にあるドーパミンを作る神経細胞が減ることが原因とされ、脳の変性に注目が集まってきました。
しかし、最新の研究は、この常識にゆさぶりをかけるものです。
中国・武漢大学人民医院(Renmin Hospital of Wuhan University, Wuhan, China)を中心とする国際研究チームは、腎臓が血液中の異常なたんぱく質の排出に関与しており、それが処理されずに神経を通じて脳に伝わる可能性を発見しました。
この研究の詳細は、2025年1月23日付けで科学雑誌『Nature Neuroscience』に掲載されています。
目次
- 脳の病気に「腎臓」が関係するという意外性
- 腎臓から始まる!?パーキンソン病の意外な発症ルート
脳の病気に「腎臓」が関係するという意外性
パーキンソン病では、脳内に「α-シヌクレイン(alpha-synuclein)」というたんぱく質が異常にたまることが知られています。
このたんぱく質が固まってできたものが「レビー小体(Lewy bodies)」と呼ばれ、神経細胞を傷つけることでさまざまな症状を引き起こすと考えられています。

従来、α-シヌクレインは「脳の中」で発生するか、「腸から迷走神経を通って脳に届く」とされる説が主流でした。
しかし近年、腎機能が低下した高齢者にパーキンソン病が多いという傾向が疫学的に指摘されてきました。
そこで研究チームは、腎臓とα-シヌクレインの関係を詳しく調べることにしました。
彼らはまず、亡くなった人の腎臓組織を調べ、パーキンソン病またはレビー小体型認知症と診断されていた11人中10人の腎臓に、異常なα-シヌクレインの集積があることを発見しました。