固有ベクトル中心性とは、ネットワーク上で「影響力のある人とつながっている人ほど、その人自身も構造的に高い影響力を持つ」とされる指標です。

たとえば、周囲から信頼されている人物や、情報のハブとなっている人物とつながっている人は、それだけで間接的にネットワーク全体に影響を及ぼすポジションにあると評価されます。

研究では、この指標をもとに各学生の影響力を数値化し、その変化を1年間にわたって追跡しました。

あわせて、各学生が「誰と誰が友達か」という他人同士のつながりをどれだけ正確に把握しているかを測定しました。

この把握力は2つのレベルに分けて測定されました。

  • micro-level(個々の人間関係の正確な認知)
  • meso-level(グループ単位での構造の認識)

特にmeso-levelは、「この人とこの人は同じグループにいるはず」といった“人間関係を読む力”を意味します。

「誰と仲が良いか」より「誰と誰が仲が良いかを把握している」

研究チームは、調査開始時点で各学生が「どの程度、他人の関係性を正確に把握していたか(accuracy)」を測定し、その後1年かけて人間関係のネットワークがどう変化していくかを追跡しました。

結果として明らかになったのは、当初から“社会の地図”を正しく描けていた学生ほど、その後、他者からの信頼や接触が自然に集まり、ネットワーク内での影響力を強めていったという事実です。

特に最初の時点でmeso-levelの構造──つまりグループごとのまとまりをよく把握していた学生が、後にもっとも高い影響力を持つようになっていたことがわかりました。

この傾向は、学期が進むごとに徐々に顕著になっていきました。

また興味深いのは、「友達の多さ」自体は、ネットワーク内での影響力の変化にほとんど関係しなかったことです。

最初は目立たなかった学生でも、正確に人間関係を理解していた人は、学年の後半には“構造的に影響力がある”とされるポジションへと自然に引き寄せられていったのです。