それがどうでしょう、新聞自らがステルス値上げをするようになりました。新聞は読者離れが深刻になり、値上げすると部数が落ち込みますから、もっぱらステルス値上げで経営危機をしのいでいるようです。
新聞用紙の使用量は重量ベースで1997年ころは450万トン、2023年は200万トンで半分に減っています。一般紙の発行部数は2011年が4400万部、23年が2600万部です。新聞社の減少、押し紙、積み紙(販売店に押し付けて見かけの部数を維持する)の削減、広告がネットに流れ、広告のページ数が減るなどの結果です。新聞離れによる経営難で記者、支局などの取材網の削減、ニュース量の減少で記事面を減らしていることも影響しています。夕刊を全面的または地域的に廃止、土曜日は廃止の新聞社も出ています。
では定価(購読料)はどうでしょうか。朝日、毎日は23年春に4400円から4900円に値上げしました。日経は23年7月に4500円を4900円に、産経は同8月に4000円を4500円にしました。読売は値上げをしなければ他社の部数をとれると考えたのか、値上げを我慢していました。その効果がないためなのか、25年1月に4400円から4800円に値上げしました。
どこの新聞社でも、値上げすれば部数は減るし、値上げによる収入増を部数減による収入減が上回り、経営が改善しない。購読料が入ってこない押し紙、積み紙の廃止で経費を削減したものの、それだけでは追いつかなくなり、ステルス値上げが続々と広がっているのです。
朝日新聞のメディア・コンテンツ事業(新聞、ネット)は25年3月期は29億円の営業赤字とのことです。新聞経営の限界点に近づいている社は多く、新聞事業だけを区分すれば、赤字の新聞社が増えていることでしょう。上位社は不動産収入、系列のテレビ局からの収益配分、イベント、電子版収入などで経営を支えています。それができる新聞社は少数です。