サルたちが毛づくろいしたり一緒に過ごしたりする相手を定量的に記録してきたのです。

この長期調査の過程で、死亡直前あるいは死亡直後の4頭のサルに対して、仲間のサルたちがどのように行動するかを詳細に記録することに成功しました

これまで、母親ザルが死亡した子ザルを持ち運ぶことはよく知られていましたが、おとなの遺体に対してサルたちがどんな反応を示すかは情報がありませんでした。

今回の長期調査は、こうした点で新しい発見をもたらしています。

では、サルたちの間で仲間の死はどのように映ったのでしょうか。

サルは親しかった仲間の遺体に寄り添うと判明!「4つの死」からサルの死生観が明らかに

研究チームが記録した4つの事例は、いずれも成体のニホンザルに関するものです。以下にその要点を紹介します。

1つ目のケースでは、2003年に死亡した28歳の最優位オス(群れで順位が最も高いオス)に対して、多くの個体は忌避反応を示しました。

しかし、このオスと最も親しかったメスと血縁者、オスが頻繁に世話をしていた2歳の子ザルだけが、遺体に接近する行動を見せました。

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老サルに毛づくろいされるなど親しい関係だった子ザルが老サルの遺体に寄り添う / Credit:大阪大学

写真にあるとおり、この子ザルは生後6カ月の時から、死亡したオスに抱いてもらったり毛づくろいを受けたりしており、特別に親しい関係を築いていました。

そして他の多くのサルたちが離れていく中、この子ザルはオスの遺体から離れようとしなかったのです。

2つ目のケースは1993年の例です。

死亡直前だった28歳の最優位オスがウジに侵された際、群れのサルたちは接触を避けました。

しかし、日常的に日常的に毛づくろいを行っていた最優位メスだけは、下写真のように、そのオスに対して毛づくろいを行い、ウジをつまみ上げて食べました。

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死亡3日前の28歳オスの傷口近くを毛づくろいする最優位メス。親しい関係だった / Credit:大阪大学