親しい家族や友が亡くなると、その遺体から離れがたく感じるものです。
私たちは遺体に寄り添う中で、「死」を受け入れ、別れを惜しみ、故人を想いながら時間を過ごします。
では、他の動物たち――とくに私たちと似ているサルたちはどうなのでしょうか?
大阪大学の中道正之名誉教授と山田一憲准教授は、野生ニホンザル集団において、死にゆく仲間や死んだ直後の遺体に対する行動を、1990年からの長期調査に基づいて記録・分析しました。
そして研究の結果、親しい関係にあったサルたちが、遺体に寄り添い、毛づくろいを続けるなど、人間にも通じる行動を取ることが明らかになったのです。
この成果は、2025年6月24日付の『Primates』誌に掲載されました。
目次
- 「親しかった仲間の死」に対してサルは何を思うのか
- サルは親しかった仲間の遺体に寄り添うと判明!「4つの死」からサルの死生観が明らかに
「親しかった仲間の死」に対してサルは何を思うのか
私たち人間は、誰かの死に直面したとき、様々な反応をします。
親しい友や近親者の死に対しては、強い悲しみを感じたり、遺体に寄り添ったりするなど、特別な感情や行動が観察されます。
このような「死生観」は人間特有のものとされてきましたが、果たしてそうでしょうか?
霊長類、とくにニホンザルには高度な社会性が備わっています。
家族単位で行動し、仲間との関係性を築き、毛づくろいなどで親和性を高めるなど、複雑な社会構造を持っています。
そのようなサルたちは、仲間の死にどのように反応するのでしょうか?

大阪大学の研究グループは、1958年から岡山県真庭市「神庭の滝」周辺に生息する「勝山ニホンザル集団」に対して、67年にわたり調査してきました。
サルの名前を覚え、名前を付けて、それぞれの行動を観察してきたのです。
そして1990年からは「サル同士の親しい関係」を調べることも行っています。