パーソナルAIエージェントの普及

 では、今後の勢力図としては、どのようになると予想されるか。

「多くの人が実際にAIを使うようになり、これからAIエージェントの時代になるといわれていますが、一つの会社のなかでも多くのAIエージェントが立てられるようになり、会社全体としてそれらをどのようにオーケストレーションしていくのかという点が重要になってきて、そのための仕組みづくりをめぐる競争が激しくなりつつあります。

 もう一つの重要な動きが、パーソナルAIエージェントの普及です。個人の考え方、趣味・嗜好、行動履歴といったものをすべて理解した上で、その個人に最適な答えを返せる“個人秘書”“デジタル秘書”みたいなものを全ユーザーが持つようになるといわれています。そのパーソナライゼーションの部分の開発をめぐる競争がAI市場の勢力図を大きく左右すると考えられます。

 マイクロソフトの製品は多くの企業に導入されているので、企業や社員一人一人のデータを蓄積・利用することができ、パーソナライゼーションの面では有利です。グーグルも個人ユーザーに加えて企業でもかなり導入されているので同様に有利でしょう。先日の開発者会議でもグーグルのCEOが、Gmailやカレンダー、Google Docs、Google ドライブなどのデータをすべて参照して、そのユーザーに最適な内容を返せるようにしていくと説明していました。一方、その点ではOpenAIは弱いです。とはいえ、現在ではGPTのユーザーは非常に増えてきており、ユーザー個人の情報をたくさん持つようになってきていますので、まったくダメというわけではありません。そうしたパーソナライゼーションの面で、どのAI企業が強くなるのかという競争になってくるでしょう」(湯川氏)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=湯川鶴章/エクサウィザーズ・AI新聞編集長)