コストパフォーマンスが重視されるフェーズに

 グーグルの各種AIサービスのベースとなる「Gemini 2.5 Pro」は、その高いパフォーマンスに定評がある。100万トークンを取り扱うことができるため膨大な量のデータセットを理解でき、テキスト・音声・動画などの情報を入力させ複雑な処理を実行。コーディング・数学・科学のベンチマークで他社のAIモデルを上回る数値をマークし、リーズニング能力に優れている。今月21日には、グーグル検索の「AI Overview」と「AI Mode」に広告を表示すると発表した。

 グーグルは今、大きな転換期を迎えているともいわれている。今月20日、最新AI機能を利用できるプラン「Google AI Ultra」を月額約250ドル(約3万6000円)で提供すると発表。これまで便利な各種サービスを無料でユーザーに提供することで巨額の広告収入を得るというビジネスモデルで成長を続けてきた同社だが、その路線を転換しつつあるという見方だ。

 そんなグーグルをめぐって、前述のとおりAI開発でもグーグルが圧勝するのではないかという予測が広まっている。エクサウィザーズ「AI新聞」編集長・湯川鶴章氏はいう。

「直近の状況としては、グーグルが今月20日に開催した開発者向けイベント『Google I/O 2025』で多くのAIに関する新たな発表が一気に行われ、“グーグル優勢”という声が強まっています。昨年くらいまではAIモデルの性能を各社が競うというフェーズで、OpenAIのGPTがリードしているとみられていましたが、今年に入ってOpenAIやグーグル、Anthropic(アンソロピック)などの先頭集団が形成されてきたという印象です。そして各社の性能に大きな差がなくなってきたこともあり、モデルの性能だけではなくてコストパフォーマンスが重視されるフェーズに変わりつつあります。特に企業ユーザーは使用料が発生するので、コストを考えるとグーグルが選ばれやすくなっています」

グーグルの価格競争力が高い理由

 なぜグーグルのAIは価格競争力が高いのか。

「低価格の中国ディープシークが出てきてから、よりいっそうコストが意識されるようになりましたが、グーグルは以前からAIサービスを提供するクラウドサービス用データセンターをどうすれば効率良く運用することができるのか、そのためにどうすれば効率の良い半導体をつくれるのか、ネットワークの仕組みを構築すればよいのかといった課題について、AIを使って取り組み、改良してきました。その結果、非常に高いコストパフォーマンスを実現できています。

 一方、OpenAIはデータセンターを持っておらず、これまではマイクロソフトのデータセンターを使っていましたが、彼らも競争力のカギがコスパになりつつあるということを認識しているので、ソフトバンクと組んでStargate Projectを立ち上げてデータセンターを自前でつくろうとしています。ですが、今からデータセンターをつくると2~3年はかかるでしょうから、当面はグーグルが有利な状況が続くかもしれません」(湯川氏)