今回のケースでは、双子胚の成長のごく初期に一方の胎児がもう一方に取り込まれてしまう「胎児内胎児(または封入胎児:fetus in fetu)」というケースが起きたようです。
これは片方の胎児の発育が極端に悪いために、もう片方の体内に寄生しているような状態です。
しかしこうなると取り込まれた方の胎児はやがて発育を停止し、もう片方の胎児の中で塊として残されることになります。
この症例は50万人に1人の割合で発生すると推定されていますが、通常、取り込まれた側の胎児はもう一方の胎児の「腹部」に塊となって現れることが多いようです。
過去に文献上で報告されている約200件の症例のほとんどが腹部で確認されています。
ただ、この症例では腹部以外の場所に兄弟姉妹が取り込まれてしまうケースも少数ながら存在します。
中でも特に珍しいのが今回報告された頭蓋内に閉じ込められるケースで、この報告件数はわずか18件と言われています。
今回のケースは、まさにその数少ないうちの1件となりました。
摘出された胎児の姿とは?【※閲覧注意】
医師の診断によると、今回報告された女児は明らかな運動能力の発達の遅延を示し、自立して座ることができなかったといいます。
また頭部の周囲は約56.5センチと同年齢の子どもより大幅に肥大していました。
(2008年の厚生労働省の調査によると、日本国内における1歳児の頭囲は男女ともに平均45センチ前後となっている)
そしてCTスキャンの結果、頭蓋内に女児の脳を圧迫する形で「胎児内胎児」が発見されたのです。
そのせいで女児の脳の一部に脊髄液が溜まる「水頭症」を引き起こしていました。
水頭症が進行すると頭囲が異常に大きくなり、眠気や発作を起こすことがあります。
幸いなことに、女児にはまだ頭蓋内の圧迫による発作や嘔吐感などの症状は見られませんでした。
結局、未発達の胎児の塊は外科手術によって無事に摘出され、DNA分析の結果、胎児は女児の一卵性双生児だったことが確認されています。