2022年の中国で、1歳の女児の頭蓋内から胎児が摘出された極めて珍しい症例が報告されました。
中国・復旦大学病院によると、女児は当時、頭部の肥大症と運動能力の発達に遅れが見られたため、両親に連れられて同病院を訪れたという。
医師チームは当初、頭部に単純な腫瘍があると判断してCT(コンピューター断層撮影)スキャンを行いましたが、驚くことに、女児の脳を圧迫する形で頭蓋内に「未発達の胎児の塊」が発見されたのです。
この胎児は、一卵性双生児として生まれてくるはずだった女児の片割れと見られています。
研究の詳細は2022年12月12日付で学術誌『Neurology』に掲載されました。
目次
- 一卵性双生児の片割れが頭蓋内に現れていた
- 摘出された胎児の姿とは?【※閲覧注意】
一卵性双生児の片割れが頭蓋内に現れていた
医師チームは、女児の頭蓋内に見つかった胎児の塊を「一絨毛膜二羊膜双胎(いちじゅうもうまくにようまくそうたい:MD双胎)」の発育不全の結果と診断しました。
胎児は通常、絨毛膜(じゅうもうまく)と羊膜という2つの膜に包まれ、一つの胎盤に繋がって誕生します。
二卵性双生児では通常胎児一人一人が2つの膜に包まれ別々の胎盤から栄養をもらいます。
しかし一卵性双生児は一つの卵がある段階で2つに分裂して誕生するため、受精後どのくらいの期間で卵が分かれたかにより双胎のタイプが異なってきます。
早い段階で分裂すれば、DD双胎というリスクの低い妊娠になりますが、少し期間が空くと一つの膜と胎盤を共有した状態のMD双胎になるのです(下図を参照)。
MD双胎は、一卵性双生児の20〜30%に見られるといいます。

MD双胎では胎児の発育において、片方の子が発育不全に陥るリスクが高くなってきます。
もちろん無事に生まれるケースもありますが、内10%は胎盤を共有するために血流のバランスが崩れ、片方の赤ちゃんの命に危険がおよぶ恐れもあるのです。