折り紙や切り紙といえば、世界中で知られている日本の伝統技術です。
その美しさと機能性から、近年では工学や建築の分野でも注目を集めています。
そんな中、早稲田大学の研究チームがこの2つの技術を融合させた新しい構造「キリオリガミ構造(Kiri-origami structure)」を開発しました。
そしてこの技術を用いることで、硬く曲げに弱い電子素子を多数実装できる柔軟な電子回路を実現しました。
本研究成果は、2025年6月5日付の『npj Flexible Electronics』誌に掲載されました。
目次
- 日本の伝統技術の融合【折り紙×切り紙】で生まれた「オリキリガミ」構造
- 新しい「オリキリガミ構造」により伸びる電子回路を実現
日本の伝統技術の融合【折り紙×切り紙】で生まれた「オリキリガミ」構造
近年の私たちの生活には、ウェアラブルデバイスやフレキシブルディスプレイが欠かせなくなってきました。
腕に巻き付けられる健康モニターや、折りたたみ式のスマートフォンなどはすでに市場に登場しており、さらなる発展が期待されています。

しかし、それらの技術を支える「電子回路」には大きな課題があります。
多くの電子部品—とりわけLEDや半導体チップなど—は、金属やセラミックといった硬く壊れやすい素材でできているため、大きく曲げたり伸ばしたりする構造に組み込むのが困難なのです。
従来、この問題に対するアプローチは2つありました。
1つは素材そのものを柔らかくする方法で、有機材料などが用いられます。
しかし、これらは性能や安定性の面で限界があります。
もう1つは構造的に柔軟性を持たせる設計上の工夫で、硬い素材をそのまま使いながら構造を変えて柔軟性を持たせます。
後者の構造的な柔軟性の分野では、折り紙や切り紙の構造が注目されてきました。