しかし、この葉緑体利用システムにも限界があります。

レタスウミウシはふだん、緑色をしています。

これは葉緑体が背中にぎっしりと並んでいるためです。

ところが長く食べ物にありつけない状態が続くと、体の色がオレンジ色に変わっていくことが観察されました。

これはウミウシがクレプトソーム内の葉緑体を消化し、栄養源として使い始めているサインだったのです。

つまりウミウシは、光合成を利用するだけでなく、いざとなればその“太陽電池”を非常食として食べることまで考えていたのです。

クレプトソームは、ウミウシにとって“栄養の冷蔵庫”でもあるというわけです。

進化の世界では、ある種の生物が別の生物の能力を取り込んで利用するということが、何度も起きてきました。

私たちの細胞内にある「ミトコンドリア」も、もともとは別の生物だったと考えられています。

それが細胞に取り込まれ、エネルギーを作る工場として共生的に進化したとされているのです。

今回のウミウシの事例は、まさにそのような共生関係が“今まさに起きている版”だと研究者は話しています。

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参考文献

Solar-Powered Thieves: New Study Uncovers Animal Organelle That Sustains Photosynthesis from Stolen Chloroplasts
https://www.mcb.harvard.edu/department/news/solar-powered-thieves-new-study-uncovers-animal-organelle-that-sustains-photosynthesis-from-stolen-chloroplasts/

Sea Slugs Steal Body Parts From Prey to Gain Their Powers
https://www.sciencealert.com/sea-slugs-steal-body-parts-from-prey-to-gain-their-powers