ではフェンタニルがどこから来たのかという点は中国の武漢がキーであることはほぼ間違いありません。武漢は医薬品の会社が集積しています。コロナ発症説も同地が医薬品の実験を行っていたからだという理由は確かに聞く者への説得力があります。中国はやられたらやり返す、という恨みを晴らす思想があるのですが、まさか恨みの100年の英国の矛先がアメリカになったのではないかと思われるほどアメリカ社会で深刻な問題となっているのです。

さて日経がどうしたのかと驚くほど力を入れているのが本日の朝刊トップの「〈NIKKEI Investigation〉フェンタニル、日本経由か 中国組織が密輸拠点」です。関連記事は1面、2面、3面の上に12面は全ページを割いています。しかも続きもあると謳っています。ポイントはトランプ大統領が毛嫌いするフェンタニル輸出は日本を介在していたのではないか、というものです。正直、記事は力を入れていますが、過去の話で今ではありません。もう1つはフェンタニルが武漢から日本経由でアメリカに流れていたかは「?」マークであり、名古屋にあったとされる拠点が何を意味していたのかも不明です。記事の趣旨はフェンタニルをアメリカに流す大掛かりな組織のトップが日本に在住していた(過去形か現在進行形かは不明)という話であります。

ただ日経が何を思ってこの記事をこのタイミングで掲載したのかわかりませんが、文春砲のようなこの記事は別の意味で影響を及ぼすかもしれません。それは赤沢氏が7回目の訪米で関税交渉を予定している中で交渉に面倒な切り口を入れたな、という点です。関税交渉を含め、トランプ氏の交渉術とは縦割り交渉、つまり特定の事象について専門家とその責任者が妥結する方式ではなく、二国間のあらゆる事象をぶちまけて交渉する方式においてアメリカの政権からは「この記事の意味するところは何だ?もしもフェンタニル問題に日本が絡んでいるならそれを徹底的に調べ上げたうえでないと関税交渉はできない」と言ってもおかしくないのです。