さらなる実験では、この4つのアミノ酸を人工的に入れ替えるだけで、トマトの酵素がナス型の毒を作り出すようになることも確認されました。
逆にナスの酵素からそれを取り除けば、トマト型の毒に戻ることもできます。
わずか数個の分子スイッチで、進化を巻き戻す――。生命の柔軟さには、驚かされるばかりです。
この発見は、単なる植物の不思議な話では終わりません。
進化とは一方通行だという前提を見直すきっかけとなり、「逆進化」もまた自然な選択の一形態であることを示しています。
もしトマトで起きたなら、人間や他の生物でも、環境の変化次第で“過去の遺伝子”が目を覚ますことはあるのかもしれません。
生命は時に、過去に手を伸ばすことで未来を切り拓く――。
ガラパゴスの火山島で静かに進むトマトの逆進化は、そんな可能性を私たちに教えてくれているのです。
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参考文献
Tomatoes in the Galápagos are quietly de-evolving
https://www.eurekalert.org/news-releases/1088583
元論文
Enzymatic twists evolved stereo-divergent alkaloids in the Solanaceae family
https://doi.org/10.1038/s41467-025-59290-4
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部