IVS Entertainmentが目指すもの:大企業とスタートアップ、そしてクリエイターの融合

 今年のIVSでは、AI、エンターテインメント、ディープテック、グローバル、ジャパン、シード、Growthという7つのテーマゾーンが設置される。各テーマに沿った革新的なスタートアップと投資家との出会いを促進するのが目的だ。

 そのなかで「IVS Entertainment」エリアでは、アニメ、ゲーム、漫画、音楽、体験、映画、アートといった日本の豊かなエンタメコンテンツに焦点を当て、『Go Global』『IP経営』『Creative Founder(起業家自身)』という三本柱をセッションテーマに掲げ、世界を熱狂させるエンタメビジネスの最新トレンドを深掘りする。

 IVS Entertainmentが主な対象者としているのは、以下のとおり。 ・エンタメ領域で更なる大きな市場に出ていこうとしているスタートアップ経営者 ・エンタメ領域でスタートアップ起業を志す起業家候補 ・エンタメ領域でスタートアップとの連携を模索している事業会社 ・エンタメ領域の最新分野にて投資先を探索しているVC・CVC

 IVS Entertainmentエリアのチーフディレクターとして、中村氏が特に注力しているのは、エンターテインメント業界の「特殊性」を活かすことだという。

「エンターテインメント領域は、これまで業界を支えてきた大企業の存在感が非常に大きいのが特徴です。ITなどの歴史が浅くダイナミックな市場とは異なります。大企業が行っている先進的な取り組みとスタートアップの機動的な動きをどちらも知ることができ、良いシナジーが生まれるエリアにしたいと考えています」

 エンタメ分野へのスタートアップ投資は拡大傾向にあり、投資家の関心も高まっている 。その背景には、IPという分かりやすい資産の、金融との相性の良さや、タレントやインフルエンサーといったクリエイターによるビジネス進出などのトレンドがある。

 IVS Entertainmentでは、これらのトレンドを「Go Global」「IP経営」「Creative Founder」の三本柱としてセッションテーマに掲げ、議論を深めていく。

エンタメスタートアップの未来

** ――エンタメ業界では、育ったスタートアップが大企業に吸収されるケースも散見されます。今後、スタートアップがIPO(新規上場)を果たしたり、M&Aで買収する側に回るほど成長する余地はあると考えられますか。 **

** 中村氏 **  十分にあり得ます。エンタメ企業はIPという分かりやすい資産を持つため会社の価値がわかりやすいです。エンタメスタートアップはそのIP、コンテンツを作り続ける仕組みを築くことが重要です。その仕組みを持った会社は、今後も大きく成長していく可能性が高いと考えています。VTubeのように、新しいコンテンツを継続的に生み出す仕組みを構築することが、エンタメスタートアップが企業価値を高める上での鍵になるでしょう。

** ――そのなかで特に注目している分野はありますか。 **

** 中村氏 **  これまでIPが注目されながらも、スタートアップ投資という点ではリスクが高くなかなか手出しされなかった部分があります。しかし、AIをIP開発に活用する時代が来たことで、高いコンテンツ制作ノウハウを持つスタジオが、クオリティを落とさずにAIで効率を上げる『スタートアップ化』の流れがこれがこれから一気に広がっていくとみています。

** ――IVSに初めて参加する方にメッセージをお願いします。 **

** 中村氏 **  年に一度、スタートアップに関わるほとんどの人が集まるお祭りです。初めてIVSに参加する方、これから起業を考えている方にとっては、まずは会場の空気を吸うだけでも刺激になると思います。自分の事業をスケールさせたい、このチャンスをものにしたいと考えている方は、会いたい人がどこに登壇するのかを狙い定め、名刺交換したい人をリストアップするくらいの目的意識を持って来場することをお勧めします。IVSは、自分の事業に必要な『武器』を手に入れる場所になるはずです。

** ――中村さんは、今後のエンタメ業界がどのように発展してほしいと考えていますか。また、どのようなビジョンを描いていますか。 **

** 中村氏 **  「クリエイターが思う存分創作活動に没頭でき、それが最大限に求める人に届き、熱狂がよりたくさん生まれる世界」を実現したいです。生成AIやブロックチェーンといったテクノロジーの発展により、クリエイターが作ったものが純粋に求めている人の手にまっすぐ届き、お金が動くような世界観が、もうすぐそこに来ていると感じています。クリエイターもファンも皆が幸せに生きていけるようなサービスをどんどん作っていきたいです。

 クリエイター自身がスタートアップの社長となり、自ら資金調達し、作品を作り、届けたい人に届けていく世界がもっと広がると思います。プラットフォームに依存するのではなく、クリエイターとファンがダイレクトに繋がっていく関係性が広がっていくのではないでしょうか。