確かに成功したイノベーションを見ると「なるほど、カンタンだな。なぜウチはできないんだろう…」と思いがちです。でも世に出る前は、ほとんどの人が「そんなの、うまくいくわけない」と反対するものなのです。

ウォークマンは、ソニーで最も有名なイノベーションですが、これも当初「録音機能のないプレイヤーなんて、売れるわけない」とほとんどの人が反対でしたが、累計販売台数4億台の大ヒット商品になりました。

開発を主導したソニーの盛田昭夫さんは、のちに「反対が多かったけど、カーステレオって録音機能がなくても、誰も文句言わずに車内で音楽を楽しむでしょ。ウォークマンも屋外で音楽を楽しむんだから、録音機能は不要だと考えたんですよ」と語っています。

イノベーションを成功させるには、賛成する人がほとんどいなくても挑戦できるように後押しし、もし失敗しても不問にして、また挑戦できることが大事なのです。

イノベーションと管理は水と油で、なかなか混じり合いません。

むしろこの経営幹部のように徹底管理することで、イノベーションは窒息します。イノベーションが成功するかどうかなんて、誰にもわかりません。経営幹部にできることは、挑戦を後押しすることです。

誤解その③

「うちにはイノベーションやるような大きな予算はありません」

これもよく言われますが、大きな予算は必要ありません。

たとえば、カップヌードル。これは食品の中でも、特に大きなイノベーションですよね。

カップヌードルは、「日清チキンラーメン(インスタントラーメン)を米国で普及させたい」と考えていた日清創業者の安藤百福さんが米国に行き、米国の消費者が日清チキンラーメンを紙コップに入れて、お湯をかけて、スプーンで食べていたのを見たのがきっかけでした。

そこで麺を発泡スチロール製のカップに入れて、透明なプラスティックのスプーンを付けて売り出したら、大ヒットしたのです。