2. エクトプラズムと降霊会の実態

 エヴァの名声を確立したのは、「エクトプラズム」と呼ばれる現象でした。暗闇で行われる降霊会で、彼女はトランス状態に入り、口や鼻、時には胸からゼリー状や布状の物質を排出しました。このエクトプラズムが徐々に形を変え、人間の顔や手足といった霊の一部を物質化させるとされました。

 この現象に魅了された一人が、著名な生理学者でノーベル賞受賞者でもあったシャルル・リシェです。彼はエヴァの能力を本物だと信じ、その研究に情熱を注ぎました。

 また、ドイツの精神科医アルベルト・フォン・シュレンク=ノッツィング男爵は、1909年から4年間にわたり彼女を詳細に調査し、数百枚に及ぶ写真を撮影しました。これらの記録は、1923年に『Phenomena of Materialisation(物質化現象)』として出版され、当時の心霊研究における非常に重要な資料となりました。この本に収められた、エクトプラズムから不気味な顔が浮かび上がる写真は、スピリチュアリズムの象徴として広く知られることになります。

【心霊スキャンダル】裸体×エクトプラズム×雑誌の切り抜き… 霊媒エヴァ・カリエールの背徳的な降霊会、その全貌の画像4
(画像=By Albert von Schrenck-Notzing, *Phenomena of Materialisation* (1920), Public DomainSource)

3. 降霊会に潜むエロティシズム

 エヴァ・カリエールの降霊会が他の霊媒と一線を画していたのは、その演出に色濃く含まれていたエロティックな要素です。

** 身体検査 ** :降霊会の前には、トリック用の道具を隠し持っていないことを証明するため、助手のジュリエット・ビッソン(彼女とは同性愛関係にあったと指摘されている)による身体検査が行われました。この検査には膣内のチェックなども含まれ、その様子が参加者に公開されることで、セッションに扇情的な雰囲気を与えました。

** 裸でのパフォーマンス ** :エヴァはしばしば衣服を脱ぎ、裸体でセッションを行うことがありました。これはエクトプラズムが彼女の体から直接現れる様子を示すためとされましたが、暗闇の中で参加者と性的な接触を持つこともあったと報告されています。

** 性的な象徴 ** :撮影されたエクトプラズムの中には、男性器の形をしたものも含まれており、彼女のパフォーマンスが多分に性的な側面を持っていたことを示唆しています。

 これらの演出は、霊媒の身体が霊界と現世をつなぐ神聖な「媒体」であるというスピリチュアリズムの思想を背景に、参加者の感情を高揚させるための戦略だった可能性があります。しかし、同時に彼女の活動をスキャンダラスなものとし、後の批判の的となりました。