20世紀初頭、第一次世界大戦の爪痕が社会に暗い影を落とす中、ヨーロッパでは死者との交信を求めるスピリチュアリズム(心霊主義)が熱狂的なブームを迎えていました。その中心で一躍スターダムにのし上がったのが、エヴァ・カリエール(Eva Carrière)、通称「エヴァ・C」です。彼女は口や体から「エクトプラズム」と呼ばれる神秘的な物質を排出し、霊を物質化させるという驚異的な現象で、当時の知識人や大衆を魅了しました。

 しかし、その降霊会は科学的探求の仮面の下で、巧妙なトリックとエロティックな演出に満ちたスキャンダラスなショーでもありました。本記事では、エヴァ・カリエールの生涯と彼女が巻き起こした現象を解説します。

1. 霊媒エヴァ・カリエールの誕生

 エヴァ・カリエール(本名:マルテ・ベロー、1886-1943)は、フランスの軍人将校の娘として生まれました。1904年、婚約者の死をきっかけに霊能力に目覚めたとされ、1905年からアルジェリアで降霊会を始めます。

 彼女の降霊会で呼び出される代表的な霊は、300年前のヒンドゥー教バラモン「ビエン・ボア(Bien Boa)」でした。セッションの参加者は、この霊が物質化し、呼吸をし、動き回る姿を目撃したと証言しました。

【心霊スキャンダル】裸体×エクトプラズム×雑誌の切り抜き… 霊媒エヴァ・カリエールの背徳的な降霊会、その全貌の画像2
(画像=精霊ビエン・ボアとされる写真 By Charles Richet – Traité de métapsychique (Alcan, 1922), Public Domain,Link)

 しかし、この最初の活動は、1906年に新聞によってトリックが暴露される形で幕を閉じます。ビエン・ボアを演じていたのは、雇われたアラブ人の御者アレスキであり、彼は隠し扉から登場していたと証言。エヴァ自身も関与を認めることとなり、彼女の信頼は大きく失墜しました。

 この失敗の後、彼女はパリに移り住み、名前を「エヴァ・カリエール」と変え、心機一転、新たなキャリアをスタートさせたのです。

【心霊スキャンダル】裸体×エクトプラズム×雑誌の切り抜き… 霊媒エヴァ・カリエールの背徳的な降霊会、その全貌の画像3
(画像=エヴァ・カリエールのエクトプラズムとされる写真 撮影者はアルベルト・フォン・シュレンク=ノッチング(1912年)  パブリックドメイン出典)