HL-LHCやLISA、ユークリッドなど、目前の大型プロジェクトが次々とこの理論の予言をテストしていくでしょう。
その結果次第では、「3次元時間」は奇抜な思考実験の域を出ないまま終わる可能性もあります。
しかし同時に、提示された世界像があまりにも魅力的であることも確かです。
もし時間が単なる一本の川ではなく、無数の可能性が織りなす広大な「時間の海」だとしたら──その壮大な仮説が事実だと証明されたとき、私たちの宇宙観は根底から塗り替えられるでしょう。
物理学における21世紀最大の革命となるかもしれません。
時間という存在の本質に対する理解が深まれば、量子コンピュータや重力波応用技術、宇宙航行といった分野にも、今は想像もつかないブレークスルーがもたらされる可能性があります。
静かなアラスカの地から生まれたこの新しい理論が、宇宙の真の姿を解き明かす主役となるのか、それとも壮大な思索の一幕として歴史に名を残すのか──その答えはこれから始まる実験と観測が握っています。
私たちは今、物理学の新たな大転換が訪れるかもしれない歴史的瞬間を目撃しているのかもしれません。
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元論文
Three-Dimensional Time: A Mathematical Framework for Fundamental Physics
https://doi.org/10.1142/S2424942425500045
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部