理論から導き出された質量比の予測は、第1世代、第2世代、第3世代が1 : 4.5 : 21という比率になり、現実の観測値と驚くほど一致しています。
さらに、既に発見されている素粒子の質量を、非常に精密なレベルで再現することにも成功しました。
例えばトップクォークという粒子の質量は、理論上173.21 ± 0.51 GeVと予測されていましたが、実際に実験で観測された値は173.2 ± 0.9 GeVという見事な一致を示しています。
また、電子の質量の計算結果も、実測値と高精度の精度で一致するなど、偶然とは思えないほどの正確さを持っているのです。
新理論の成功度合いを測る物差しの1つに既存の測定値と新理論の理論値がどれほど一致するかというものがありますが、その点において時間を3次元とする今回の理論は素晴らしい一致を見せていたのです。
それだけでなく、この理論は私たちがまだ見つけていない未知の粒子の存在も予測しています。
理論計算によれば、エネルギーが約2.3 TeVと約4.1 TeVの地点で新しい粒子が見つかる可能性があります。
この予測は、今後アップグレードされる大型粒子加速器HL-LHCや、計画されている超大型加速器FCC-hhで直接検証することが可能なものです。
さらに興味深いことに、この理論は重力波と光が全く同じ速さで進むわけではない、という微妙な予測までしています。
理論によれば、重力波は光よりもごくわずか遅れ、その速度差は光速の約1.5×10⁻¹³%(0.00000000000015%)程度とされました。
この違いは、次世代の高感度な重力波望遠鏡(LIGOの改良版や宇宙で観測を行うLISAなど)によって、実際に観測できる可能性があります。
また、この理論を使うと、宇宙の膨張を加速させる謎の力「ダークエネルギー」の振る舞いにも微妙な変化が起こると予測されます。
これについては、2027年以降に本格的に稼働する宇宙望遠鏡ユークリッドやヴェラ・C・ルービン天文台による観測で、近い将来検証が行われる予定となっています。