こうした数々の予測を打ち出したクレテチュカ理論ですが、果たしてこれらは本当に正しいことが証明されるのでしょうか?
「時間の海」を泳ぐ宇宙──世界観を塗り替える理論は本当に正しいのか?

クレテチュカ准教授の「3次元時間」理論が実証されれば、現代物理学の数々の難問が一気に解き明かされるかもしれません。
まず第一に、「なぜ素粒子は3世代あるのか?」という謎です。
標準模型では3世代である理由を説明できませんが、本理論では時間軸が3本あるため自然に3世代の粒子家族が生まれると説明されます。
第二に、素粒子の弱い崩壊で見られる「左手型」の偏り(パリティ対称性の破れ)も、この3次元の時間構造から自ずと導かれるといいます。
宇宙はなぜ左利きなのか、という長年の疑問に幾何学的な答えを与える点も興味深いです。
(※弱い相互作用だけが「左手型」と呼ばれる偏った性質を持つ理由について、時間の幾何学的構造がその答えになるかもしれません。)
さらに特筆すべきは、複数の時間次元が存在しても因果律(原因が結果に先行する原則)が守られることが厳密に保証されている点です。
従来の多次元時間モデルは因果律が崩れてしまうことが弱点でしたが、クレテチュカ理論では高度に洗練された数学構造のおかげで、時間が3次元でも「原因があって結果がある」という当たり前の秩序が保たれるのです。
そして忘れてならないのは、アインシュタインの一般相対性理論との関係でしょう。
新理論は決して相対論を否定するものではありません。
むしろ3つの時間軸のうち2つを無視できる状況では一般相対論の方程式が自然に現れることが示されています。
これは、これまで成功を収めてきた既存理論を包含していることを意味し、新しい理論の整合性を高めるポイントです。
とはいえ、この挑発的な理論も今後の検証を経て初めて評価されます。