ただし、運転開始が2030年と遅いため、詳細な検討はこれから進むと見られます。今後の動向に注目すべきです。

経産省の「実績作り」に振り回される現場

なぜ、事業の見直しや計画変更の話が後になって出てくるのでしょうか? 一つの要因は、風力発電が本来は相応のコストを要するにもかかわらず、経産省が「再エネ=安価」というイメージ作りにこだわった結果、過度な競争入札が行われ、適正な売電価格が設定できなかったことです。

FITやFIP制度の原資となる再エネ賦課金が電気料金を押し上げる原因として批判がある中(実際その通りですが)、第2ラウンド以降は、ジャケット式の案件⑦を除き、すべてFIPプレミアムなしの最低価格での入札となりました。逆に言えば、その価格でなければ落札できない状況だったのです。

そのため、各社は建設費や運用費を最大限切り詰めて、なんとか採算を合わせようとしていますが、資材価格の高騰など想定外の要因により、破綻しかかっているのが現状です。

欧州では洋上風力の入札実績が多数あり、手法としては特段珍しいものではありません。しかし日本では今回が初めてであり、しかも落札後にルールが変更されるなど、制度設計の不備も目立ちます。

政府は2040年代の電源構成において風力発電の比率を4~8%に引き上げる目標を掲げていますが、経産省がその目標達成に焦りすぎた結果、民間企業や受け入れ自治体が振り回されている現状は、非常に気の毒です。