今回のENEOSによる「採算の見通しが困難」との発言は、これで3件目になります。
他の案件も同様の状況では?
表1に示すように、洋上風力の入札案件の中で、何らかの懸案が公表されている案件をグレーで表示しています。多くの案件は、企業側がギリギリの条件で落札しており、似たような状況にあると考えられます。

表1 洋上風力入札案件一覧※ 懸案事項が公表されてる案件をグレー表示させた
たとえば、案件④と⑤では、風車メーカーや発電機の出力、売電単価が同じです。しかし細かい点で違いがあります。案件④では、本来であれば最も近い能代港を建設用港湾として使用したいところですが、風車施工時期が案件①と重なってしまうため、北海道の室蘭港を使用することになっています。これは、第1ラウンドの企業体(三菱商事など)が能代港の使用権を既に確保しているためです。
ENEOSとしては、三菱商事と日程調整をして能代港の使用を模索したいところですが、三菱商事が事業撤退を検討しているような状況では、調整は困難です。
一方、案件⑤は秋田港を使用することが既に決定しており、建設上のリスクは比較的小さいといえます。
案件⑦はやや特殊
長崎県西海市沖の案件⑦は、入札条件で「ジャケット式基礎構造」が指定されており、売電単価も他より高く設定されています。ジャケット式とは、図1に示すようにモノポール式より構造が複雑で、コストも高くなります。

図1 風力発電の構造の違い国土交通省資料より
一般に、水深30m未満の海域ではモノポール式、30~50mではジャケット式、50m超では浮体式(ただし、浮体式はまだ技術的に未成熟)とされています。ジャケット式は建設コスト高騰の影響を受けやすい構造であることも留意が必要です。
第3ラウンドの2案件はこれから
第3ラウンドの2案件は、使用する風車メーカーが他と異なり、ドイツ・ノルウェーのシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー社となっています。