この影響で、1992年から2006年の間に約3900万件の犬咬傷と、4万8000人の狂犬病死者が発生したと推定されています。

薬剤の使用が制限された後、ハゲワシの回復が確認されたことで、腐肉食動物の重要性が再認識されました。

加えて、ハゲワシやハイエナが私たちの健康に良い影響をもたらしていることも研究で分かっています。

たとえば、エチオピアのメケレでは、ブチハイエナが年間200トン以上の家畜死骸を処理し、炭疽菌や牛結核のヒトおよび家畜への感染拡大を防いでいると考えられています。

このように専門性の高い腐肉食動物は、「自然界の掃除屋」として働いており、私たちの健康を守っているのです。

では、ハゲワシやハイエナなどの腐肉食動物の減少が人間の健康リスクを高めている現状において、私たちには何が求められているでしょうか。

研究チームは、生息地保護や密猟の防止、薬剤使用の見直し、そして社会的イメージの改善が急務だと強調します。

特に重要なのは、「腐肉を食べる動物=不潔で危険」という認識を改めることです。

例えば、教育活動や動物ドキュメンタリーでのポジティブな紹介などが有効かもしれません。

ハゲワシが空を舞っている光景は、不気味どころか、健全な生態系が保たれている証拠なのかもしれません。

自然界の掃除屋を大切にすることは、私たちの命を守ることにもつながっているのです。

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参考文献

Nature’s “clean-up crew” is vanishing – and it’s bad news for human health
https://newatlas.com/biology/scavenger-loss-disease/

Decline in apex scavengers raises human disease risk
https://news.stanford.edu/stories/2025/06/decline-apex-scavengers-human-disease-risk