彼らの減少は、都市化や農地拡大による生息地の喪失、毛皮や漢方薬を目的とした違法取引や密猟が原因だと考えられています。
また、「家畜を襲う」「汚い動物」という偏見・誤解から、駆除対象となることも原因の1つです。
一方で、ネズミや野良犬、アライグマなどの中型・小型動物は、個体数は増加しています。
ハゲワシやハイエナがいなくなることで、小さな腐肉食動物たちは食事にありつける確率が高くなっているのでしょう。
では、こうした腐肉食動物の個体数の変化は、どんな影響を及ぼしているのでしょうか。
腐肉食動物の減少は人間の病気リスクを高める

大型の腐肉食動物の減少は、私たち人間に大きな問題をもたらしています。
ハゲワシやハイエナのような腐肉食専門動物は、ゾウや牛など大型動物の死骸も短時間で処理する能力を持ちます。
このような処理が遅れたり行われなかったりすれば、死骸は腐敗し、疫病の原因となる細菌やウイルスが拡散するリスクが高まります。
一方で中型・小型の腐肉食動物たちは、この役割を十分に担えません。
死骸をそれほど多く食べることができず、雑食であるため他の食料でも空腹を満たしてしまうからです。
しかもネズミや野良犬は、狂犬病やレプトスピラ症、ブルセラ症など、人間に感染する人獣共通感染症(ズーノーシス)の保有者でもあるため、その個体数が増えることで、感染症リスクを高めてしまう恐れがあります。
このような悪循環を裏付ける実例も存在します。
たとえば、1990年代のインドでは、家畜に使われた薬剤ジクロフェナクがハゲワシに腎不全を引き起こし、致死率が非常に高くなったため、個体数が激減しました。

その結果、死骸を処理する役割を担う存在がいなくなり、野良犬が急激に増加しました。