その謎を解明するため、研究者たちはまず参加者たちに異なる種類の照明を浴びせながらギャンブルのような意思決定をする実験を行いました。
用意されたのは2種類の照明です。
ひとつは青みが強く、カジノのような冷たい青白い光(色温度約6500K)で、もうひとつは青色を極力減らした暖かな黄白色の光(色温度約2700K)です。
ただし、明るさはどちらもオフィスの室内程度に統一されており、違いは色の成分だけでした。
参加者はそれぞれの日に別々の照明を浴びながら、パソコン画面でお金を賭けるゲームをしました。
ゲームのルールはシンプルで、例えば「50%の確率で24ドルもらえるが、50%の確率で18ドルを失う」というリスクのあるギャンブルに挑戦するか、もしくはリスクを避けて「必ず2ドルだけもらえる」という安全な選択肢を取るかを選ぶというものです。
この選択を何度も繰り返してもらい、参加者がどの程度リスクを恐れて安全策を選ぶか、または逆にどのくらいリスクを取るかを測定しました。
すると青い光をあまり照射していない場合、リスクがあるギャンブルを選んだ男性参加者は55.13%で、女性参加者36.05%となりました。
なぜ「儲けが少ない安定」を選ぶ人が多いのか?
冷静に考えれば「50%の確率で24ドルもらえるが、50%の確率で18ドルを失う」というギャンブルの1回あたりの期待値は3ドルであり、必ず2ドルもらえるほうの期待値は1回あたり(当然ながら)2ドルとなります。にもかかわらず、多くの人が「確実に2ドルを受け取る」という儲けが少ない安全な選択をするのはなぜでしょうか?
この理由を理解するカギは、先にも述べた人間の「損失回避」という心理的傾向にあります。私たちの心は、同じ金額を得たり失ったりしたときでも、その感じ方が非対称です。つまり、100ドルをもらった喜びよりも、100ドルを失った痛みの方がずっと強く感じられるということです。これは心理学では「プロスペクト理論」として知られています。