リブランディングと新規出店

 この現状に対して、エターナルホスピタリティグループは中期経営計画(25年7月期~27年7月期)に700店舗の回復を記載した。回復に向けた施策はおもに2つが挙げられる。第一にリブランディングである。大吉の看板が醸し出す強面感や厳つさを軽減し、入り口から店内が見えず入りにくいという造作を解消するために、内外装に白木を使用してソフトに演出したうえに、窓のサイズを拡大して路上から店内を見やすく変えた。この施策を経て、ダイキチシステムは従来の店舗を「赤大吉」、リブランディングした店舗を「白大吉」と区分けしているが、その差異として表れたのは女性客比率で、「赤大吉」の20%に対して「白大吉」は50%に増加した。

 施策の第二は、「エリア指定リース方式」と呼ぶ新たな出店形式の採用が挙げられる。従来の出店方式は、本部所有の店舗を借り受けるリース方式、希望エリアで物件を取得する開業するオーナー方式の2つだったが、新たに「エリア指定リース方式」を加えている。この方式は、まずリース方式で2年間店舗営業経験を積んだ後、希望するエリアで本部が用意した店舗をリース方式で運営する。

 エリア指定リース方式には店舗数の拡大だけでなく、加盟者のライフスタイルをサポートする意図もある。宇野毅取締役は語る。

「例えば親の介護で実家に戻らなければならなくなった場合、地方で就職先が見つかっても月給20万円では生活ができないという例もある。しかし大吉を運営すれば、もっと多い収入を得られる可能性がある」

 リース方式の収益モデルは、店主夫婦とアルバイト1人で運営する場合、月商180万円で店主の収入は67万円、月商230万円で86万円と開示されている。ロイヤリティは毎月定額の3万円である。一般にFCの場合、収益モデルと実績値に一定のかい離がある例が少なくないが、大吉は「実績値は収益モデルとほぼ同じで、月商160~180万円が多い」(近藤氏)という。店主の収入はおよそ月47~67万円という水準だ。

 大吉店主の8割は10年以上にわたって加盟しているが、近藤氏は「本部は店主の収入に関与しないが、辞めないで継続しているのは、しっかりと実入りがあるからだろう」と推察している。

 栃木県宇都宮市や群馬県高崎市周辺への出店では、この地域独自の出店形式を取り入れた。過去に大吉が運営されていた栃木県と群馬県を潜在的な認知やニーズが見込める市場と位置づける。2つの地域限定で本部が店舗を貸し出し、店主はほかの地域で営業経験がなくても開業できるプランを設けた。潜在ニーズの大きな市場であり、未出店になっているエリアで店舗展開を進めていく方針だ。