この構造を一部でも正そうとしたのが、石破茂元防衛相の「アジア版NATO」構想だった。地域の集団安全保障という観点からは画期的だったが、国民の無関心と政治の怠慢により立ち消えとなった。地位協定の改定も同様である。
もはや、アメリカが自ら安保条約を破棄する可能性すら視野に入ってきている。「同盟」とは、命を預け合う相互の信頼関係であり、「自分は戦わないが相手には守ってもらう」という日本の姿勢は、いかなる同盟でも容認されるものではない。
米中対立の激化、多極化する国際秩序、民主主義の退潮、アメリカの内向き志向――日本を取り巻く地政学的現実は極めて厳しい。このままでは、いつか手遅れになる。
だからこそ、いまこそ問う。「自立」とは何か。その問いを、国民一人ひとりが自らの問題として捉え、議論し、決断すべき時が来ている。
国家の生存を決するのは、条約でも政府でもない。「国民の覚悟」である。