農協が、従来8月末頃までに行っていた新米の「概算金」提示を大幅に前倒ししているからだ。

JA全農にいがた(農協新潟県本部)は、25年産コシヒカリの概算金を「3月」に提示している。価格は5kgあたり「1,917円」(※)。昨年に比べ500円ほど高い額だ。これをきっかけに、新米獲得競争が始まっている。

※以降、米価格は5kg単位とする

この概算金に対し、一部の民間集荷業者が、農家に提示した買取価格は「2,500~2,700円」。これを受け、JA全農にいがたは、3月に掲示したばかりの概算額1,917円をさらに引き上げ「2,167円」としている。JA全農にいがたの町田孝米穀部長は以下のように説明する。

「店頭価格が高額になりすぎないよう総合的に考えて判断した」

新潟のJA、コメ買い取り価格を5割引き上げ 争奪戦が激化|日本経済新聞

皮肉なことに、これら一連の動きは、民間集荷業者の買取価格をさらに引き上げ、新米価格の高騰を招く可能性が高い。

また、小売業者は8月末の販売期限に難色を示し始めている。

「期限を延ばしてほしい」「時間が足りない」「ギリギリ間に合うかどうか」

イトーヨーカドー、ファミリーマート、ローソンなど随意契約した事業者の訴えに、小泉大臣は「検討する」と応じたと言う。

迷走する施策

加えて、農林水産省は、備蓄米の随意契約の対象を、外食や中食(弁当など)を扱う事業者にまで拡大してしまった。すでに、ワタミやコンビニ大手が申請しており、宅配弁当やおにぎりに活用すると言う。

だが、農協が「概算金」決定の指標とするのは、あくまで「コメの小売価格」だ。コンビニのおにぎりや、ワタミの配食の価格ではない。中食・外食にコメの小売価格を下落させる効果はないのだ。

時期を逸した備蓄米販売は、店頭で入手できたラッキーな消費者の家計を助けるだけ。的外れな備蓄米の使途拡大は、随意契約可能な大手企業の利益を増大させるだけだ。