しかも子どもたちが感じた“楽しさ”のスコアは、屋内と屋外でほぼ同じでした。
となれば、やはり脳の違いを生んだのは「屋外」そのものにあると考えるのが妥当でしょう。
自然は脳の「エネルギー補給所」だった?
なぜ屋外で運動すると、脳の働きがこれほどまでに向上するのでしょうか?
チームは、その理由として「注意回復理論(Attention Restoration Theory)」に注目しています。
この理論によれば、自然の中に身を置くことは、人間の注意力を回復させる“癒し”の効果があるとされます。
人工的な環境では脳が常に注意を払っている状態になりますが、自然の風景は「ぼんやり眺めているだけで脳が休まる」ため、脳の資源が回復するというのです。
とくに現代の子どもたちは、学校生活やスクリーンの前での学習など、長時間にわたって集中を強いられる場面が多く、慢性的な“脳疲労”状態に陥りやすいといわれています。
そんな彼らにとって、屋外での運動は、単なる身体の鍛錬にとどまらず、脳をリフレッシュさせる手段となっているのかもしれません。
また今回の研究では、屋外のほうが心拍数が高かったことも報告されています。
これはつまり、子どもたちが自然とより「本気」で運動していたことを意味します。
強制されたわけでも、意識したわけでもないのに、身体が自然に活性化していたのです。
それが結果的に、脳の働きを後押しした可能性もあります。
ただしチームはこの点について「因果関係を断定するには今後の研究が必要」と慎重な立場をとっています。

屋外での運動は、単なる“遊び”ではなく、脳の働きを高める科学的に裏付けられた方法である――今回の研究は、そのことを明確に示しています。
とくに現代社会では、都市化の進行とともに、子どもたちが自然と触れ合う機会が減っています。
それに比例して、集中力の低下や学習意欲の喪失、心の不調を訴える若者も増加しています。