「運動が記憶力や集中力を高める」ことは近年の研究で確かになっています。
しかし同じ運動でも「屋外」で行ったほうがはるかに大きな効果をもたらすことが、新たな研究で明らかになりました。
英ノッティンガム・トレント大学(NTU)の研究チームは、11歳から13歳の子どもたちを対象に、屋外と屋内で全く同じ運動をさせたうえで、脳の働きにどのような違いが現れるのかを検証。
その結果、屋外で運動したあとのほうが、記憶の反応速度や注意力、情報処理の正確さが格段に高まっていたのです。
なぜ屋外の方が脳にいい効果をもたらすのでしょうか?
研究の詳細は2025年6月1日付で学術誌『Physiology and Behavior』に掲載されています。
目次
- 同じ運動でも、外ですると「脳が冴える」
- 自然は脳の「エネルギー補給所」だった?
同じ運動でも、外ですると「脳が冴える」

研究に参加したのは、イギリス東ミッドランド地方の中学校に通う子どもたち45人です。
彼らは学校の体育の時間を使い、30分間のバスケットボールを屋内と屋外の両方で体験しました。
使用する道具、コートの広さ、練習メニュー、指導者まで、すべての条件は統一されており、異なるのは「場所(屋内か屋外か)」だけです。
運動の前後には、「注意力」「記憶力」「情報処理スピード」などを測定する3種類の認知テストが実施されました。
そして驚くべきことに、屋外での運動後にのみ、以下のような明確な向上が見られたのです。
・記憶課題での反応速度が最大100ミリ秒以上短縮
・注意を要する課題での正答率が上昇し、その効果は45分後も継続
・情報処理速度の改善も顕著
特筆すべきは、屋内のほうが総移動距離もスプリント回数も多かったという事実です。
つまり、「よりたくさん動いたから脳機能が上がった」というわけではなく、屋外という環境そのものに“脳を活性化させる力”があることが示されたのです。