宇宙からはときおり未知の電波が届くことがあります。
強力な電磁パルスが観測された場合、そこには何らかの活発な天体が存在することを意味しています。
そのため宇宙から届く電波について、様々なプロジェクトが観測を行っています。
しかしそんな中で、宇宙ではなく地球の底から空に向かって強力な電波が飛び出してきたように見える“謎の電波パルス”が検出され、物理学の一部の専門家の間で話題となりました。
まるで地球の中に何か未知の存在が潜んでいるかのようなこの現象。
仮に地中から直接放射された信号であるなら、私たちが想定している粒子のふるまいや伝播の仕組みに見直しが求められる可能性があります。
この“電波の謎”に迫るため、アルゼンチンの「ピエール・オージェ観測所(Pierre Auger Observatory)」の研究チームが、南極での観測結果を徹底的に検証しました。
この研究の詳細は、2025年3月に科学雑誌『Physical Review Letters』に掲載されています。
目次
- 何が“謎”なのか? ANITAが捉えた異常な信号
- 地中に何かある? それとも理論が間違っている?
何が“謎”なのか? ANITAが捉えた異常な信号
もともとこの“謎の電波”が発見されたのは、NASAが行っていたある特殊な観測実験でした。
それは「ANITA(アニータ:Antarctic Impulsive Transient Antenna)」という名のプロジェクトです。

ANITAは、宇宙から飛来する高エネルギー粒子、特にニュートリノと呼ばれる素粒子を捉えるために設計された装置です。
観測は、南極上空およそ35キロメートルを飛ぶ巨大な気球に搭載されたアンテナを使って行われます。
南極の氷は広大で不純物も少なく、こうした高エネルギー粒子が氷と衝突した際に生じる微弱な電波(これを「電波パルス」と呼びます)を非常にクリアに捉えることができる、いわば天然の観測スクリーンなのです。