また、「ドイツへの米国の新型中距離ミサイルの配備は行わない。米国の長距離超高速ミサイルシステムがドイツに配備されれば、わが国は当初から攻撃目標となってしまう。2026年の核拡散防止条約運用検討会議では、第6条に基づく核軍縮へのコミットメントを、国際法に基づく拘束力のある進捗報告と「先制不使用」宣言によって新たに強化しなければならない。同時に、2026年に失効する戦略兵器削減に関する新戦略兵器削減条約の更新、ならびに欧州における軍備制限、軍備管理、信頼醸成措置、外交、軍縮に関する新たな交渉を求めることが重要だ。ロシアとの関係緩和と協力体制への段階的な復帰、特に気候変動という共通の脅威との闘いにおいて、南半球のニーズへの配慮。ドイツとEUは東南アジアにおける軍事的エスカレーションに参加しない」などが明記されている。
「マニフェスト」の内容はメルツ政権が進めようとしている外交・安保政策とは明らかに異なる。そのような内容が野党からではなく、与党社民党内から飛び出してきたわけだ。連邦議会におけるSPD議員連盟の主要メンバーは、「マニフェスト」に対し、現時点では距離を置いている。メルツ首相は今月末ベルリンで開催される社民党の党大会の動向を注視するだろう。
なお、ドイツ連邦議会(下院)で5月6日、メルツ党首を首相に選出する投票が行われたが、メルツ氏は第1回投票では選出に必要な過半数の支持を得られなかった。連立政権内でメルツ氏の政策に強く反発する議員が反対票を投じたからだ。当方はこのコラム欄で「メルツ氏は今後、様々な政策を実施する際にも1回目の投票結果を忘れてはならない」と述べ、「第1回目投票の18票の反対票はメルツ氏の政権運営で今後も悩ますことになる」と書いた。その予想は当たっていたようだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年6月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。