ちなみに、メルツ首相は「プーチン大統領と会談することは現時点では無意味だ。ロシアの軍事的脅威に対してはウクライナの支援の継続と欧州の抑止力の強化が要だ」と繰り返し述べている。シュテグナー議員の見解はメルツ首相の軍備力強化路線に対する批判だ。同時に、連立政権下でCDU/CSUの言いなりになっている社民党指導部への不満の表れともいえるだろう。
「マニフェスト」のもう一人の共同署名者であるロルフ・ミュッツェニヒ氏は、ベルリンの新聞ターゲスシュピーゲルに対し、党大会で政策の見直しを求める意向を示唆している。また、SPD元党首ノルベルト・ヴァルター=ボルヤンス氏は、「われわれはロシアとの対話を提唱しているだけだ」と指摘し、CDU/CSU主導の「無制限の軍備拡張」に警鐘を鳴らした(独民間ニュース専門局ntv)。
それに対し、ザールラント州首相のアンケ・レーリンガー氏(SPD)は、ポリティコ・ポータルの「プレイブック・ポッドキャスト」で、「シュテグナー氏やミュッツェニヒ氏の見解は特に驚くべきことではない」と理解を示す一方、「プーチン氏のロシアとの協力は、現状では求められていないと思う」と付け加えた。
SPDの青年部代表フィリップ・トゥルマー氏も「ディ・ツァイト」紙で、「残念ながら私には(マニフェストの内容は)あまりにも近視眼的で、思慮に欠けているように思える。特にロシアのウクライナ侵略戦争に関してはそうだ。交渉に応じようとしないロシアにどう対処するかという重要な問いに対する答えを提示していない」と指摘する。
「マニフェスト」では「国防予算を国内総生産(GDP)の3.5%または5%という固定的な年次増額にとどめることには、安全保障政策上の正当性はない。軍備費を増大し続けるのではなく、貧困削減、気候変動対策、そして私たちが依存する天然資源の破壊防止への投資に、より多くの財源を緊急に投入する必要がある」と記述されている。