中東のイスラエルとイラン間の戦争が激化していることもあって、メディアの関心はどうしても中東に注がれるが、「欧州の盟主」ドイツで看過できない動きが出てきている。メルツ首相が率いる「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)の政権ジュニアパートナー「社会民主党」(SPD)内で党現指導部(クリングバイル党首=財務相兼副首相)に対する静かな反乱が生まれてきているのだ。メルツ連立政権の土台が揺れ出す危険性も排除できない。

「連立協定」を発表した党首たち(左からゼーダーCSU党首、メルツCDU党首、クリングバイルSPD党首、エスケンSPD共同党首)CSU公式サイトから、2025年04月10日

「連立協定」を発表した 党首たち(左からゼーダーCSU党首、メルツCDU党首、クリングバイルSPD党首、エスケンSPD共同党首)CSU公式サイトから、2025年04月10日

社民党は今月27日~29日、ベルリンで連邦党大会を開催するが、SPD議員の数名が今月日発表した「マニフェスト」(6頁)が党内に動揺を引き起こしている。署名者たちは前回選挙(2月23日実施)での社民党の歴史的敗北、得票率(16・4%)を指摘し、党の刷新を求める一方、連邦政府の現在の軍備増強政策からの離脱と「ロシアとの協力」を求めているのだ。

独週刊誌シュピーゲルは保守派同盟「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)と中道左派「社会民主党」(SPD)が公表した連立協定(144頁)について、「ドイツにとって中道派の最後のチャンスかもしれない」と評していたが、そのメルツ政権の一方の与党、社民党で不穏な動きが出てきたのだ。

ドイツ連邦議会議員で外交政策専門家のラルフ・シュテグナー氏は、ARDとZDFの番組で、「ロシアのプーチン大統領を軍事力で交渉のテーブルに引きずり出す戦略は失敗した。軍備だけではうまくいかない。ウクライナへの軍事支援と、ロシアとの対話に向けた外交努力の両方を重要だ」と主張している。