また、6月5日にアウェイで行われたW杯アジア最終予選オーストラリア代表戦(パーススタジアム)にA代表初先発を果たしたMF鈴木唯人は、2023年に清水エスパルスからデンマーク1部ブレンビーIFに移籍した際の移籍金が500万デンマーククローネ(約1億円)ほどで、ドイツのフライブルクに移籍した際の移籍金は800万ユーロ(約13億円)ほどと報じられた。

一方、安さを象徴するのが、日本代表DF伊藤洋輝のケースだ。2022年にジュビロ磐田からシュトゥットガルトにレンタル移籍した際、買取オプション行使で数十万ユーロ(数千万円)だったと言われている。2024年に、シュトゥットガルトからバイエルン・ミュンヘンへ移籍の際の移籍金は3,000万ユーロ(約51億円)となっている。

Jリーグから移籍した選手が、わずか2年でその市場価値を数十倍に跳ね上がったという事実は、Jリーガーの金銭的評価がいかに低いかを雄弁に物語っている。なぜJリーガーの移籍金は安くなりがちなのか。これには、複数の構造的な要因が複雑に絡み合っている。

Jリーグ 写真:Getty Images

なぜJリーガーの移籍金は安くなりがちなのか

まずは、世界のマーケットにおいて、Jリーグは「育成力は高いが、リーグレベルの面で劣る」と見なされていることが挙げられる。

欧州クラブからすればJリーガー獲得は一種の「投資」であり、失敗のリスクを考慮して高額な移籍金を払うことをためらう傾向にある。まずは「お試し価格」で獲得し、活躍すれば儲けものという考え方が根底にある。逆の視点で言えば、戦力にならなければ“飼い殺し”にしても痛くない金額を設定している。

また、欧州クラブはJリーガーの強い海外志向を見透かしている側面もあるだろう。日本の選手は金銭面よりも「欧州のトップレベルでプレーする」という夢を優先する傾向が非常に強いため、選手も代理人も、移籍をスムーズに進めるためにあえて低額の移籍金(契約解除金)を設定するケースが少なくない。Jクラブ側も、選手の夢を応援したいという気持ちを汲み、そうした契約条項を飲まざるを得ず、安価なオファーを受け入れざるを得ない状況が生まれてしまう。